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■故郷の香り/


2003年/中国

監督:フォ・ジェンチイ(『山の郵便配達』『ションヤンの酒家(みせ)』)
原作:「白い犬とブランコ」モォ・イエン(『紅いコーリャン』『至福のとき』)
出演:グオ・シャオドン(『藍色愛情』)、リー・ジア(『藍色愛情』)、香川照之(『鬼が来た!』)

配給:東京テアトル、ブロードメディア・スタジオ
上映時間:109分
公開:2005年1月テアトル・シネマほかにて
 
■ストーリー
 
 ジンハーが10年ぶりに故郷の村に帰ってきた。大学に合格して以来、一度も村には戻らず、今では北京に妻も子どももいるジンハーだが、恩師のもめごとを解決するために戻ってきたのだった。用をすませ、すぐに北京に帰るつもりだったジンハーだが、村の橋で初恋の人・ヌアンに再会する。「僕を恨んでいる?」と思わず口走るジンハー。翌日、彼はヌアンの家を訪ねる。ヌアンはいまは耳と口が不自由なヤーバと結婚しており、6歳になる娘がいた。ジンハーはヌアンと2人で学校に通った昔を思い出す。2人で乗った村のブランコ。村にやってきた劇団員に恋するヌアン、それに嫉妬する自分。そして2人とも失恋したこと。ブランコに一緒に乗っているヌアンに、自分の思いを告げたことなど。
 
■レビュー
 
 フォ・ジェンチイ監督の名が日本で知られることになった『山の郵便配達』(98)は、「わかりやすく感動させてくれる」ストレートな直球映画だった。「切れ」はあまり感じられなかったが、美しい中国の農村風景、少数民族の祭りの情景など、風景の描き方は実にうまいと感じた。次の『ションヤンの酒家』(02)は、都会に住む主人公を中心に、より複雑な人間関係を描いているが、あっさりとした印象で全体的にはやや物足りなかった。ただし雨に濡れた重慶市街の風景描写はバツグンで、主役のタオ・ホンの演技とともに印象に残った。
 本作でも、雨の降る湿った村の空気が本当に伝わってきそうな描写は実にうまい。かつて故郷に置き去りにしてしまった恋人に、久々に再会した主人公。失われた日々を悔やむが、誰かがとくに悪人という訳でもない(本作に悪人は登場しない)。状況やその場の雰囲気に流されていくのが人間の弱さなのだ。しかし誰もが過去に持っている「あの時、何かをしていれば」という後悔の念を、この映画は思い出させてくれる。
 主人公たちはみな時間に流され、そのことを後悔しているが、流されなかったものもいる。その粗野な男ヤーバを演じた香川照之がまたすばらしい演技で、彼がいなければあのラストの感動はなかったろう。油断をして観ていた僕は、ここで大いに泣かされた(隣の中年男性も号泣)。
 余計だけど、日本語タイトルがパッとしないのは何とかして欲しい。原題の「暖(ヌアン)」(主人公の名前と「暖かみ」をかけている)でも良かったと思うのだが。(★★★前原利行)
 
■関連情報
 
・本作は2003年の東京国際映画祭でグランプリと優秀男優賞(香川照之)を受賞している。
 
■DVD情報
 
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