監督:楽 真琴 配給:アップリンク 実際この映画を観ると、その辺りのことが真摯なリアリティを持って迫ってくる。パルデン・ギャツォは現地当局に33年も投獄、拷問を受け、精神的にも肉体的にもボロボロのはずなのに、身を削る思いで世界を駆けずり回る。トリノ・オリンピックの際は、既に高齢にも関わらず、ハンガーストライキをして北京オリンピック開催に異議を申し立てる。狭いテントの中で、そばにいた若いチベット人と二人で泣くシーンがあった。その思いがけない姿に、目頭が熱くなった。 作詞家の湯川れい子さんもコメントされていたが、チベット問題は自分たちの問題でもある。大国の、国家権力の、多数派の横暴さに、いつ自分たちが巻き込まれるか、逆に行う側になるかわからない。チベット問題は、ウイグル、台湾、朝鮮、沖縄、アイヌ・・・とも置きかえられる。多元的な視点で語られなければならないと思う。日本でチベットデモが起きたとき、その近くで大きく目に入ったのは過激そうなナショナリストたちの姿だった。中国共産党政権も脅威なのだが、それに煽られ暴走しかねない日本のナショナリズムも十分に怖いのだ。 奇しくも、今年はチベット蜂起から50年、天安門事件から20年の年である。中国政府はこれまでにない固い鉄の扉で言論の門戸を閉ざしている。辛抱強く、粘り強く、知恵を持って働きかけなければならない。ダライ・ラマの評伝“The Open Road”を書いた Pico Iyerによると、ダライ・ラマはチベット人同胞に、こう諭しているそうである。「中国語を学び、新しい統治者と争うのではなく、対話できるようにしなさい」と。そして、自分の死後を見すえながら、また、著しい変化を遂げている個々の中国人に期待しつつ、「30年後のチベットに、600万人のチベット人と1000万人の中国人仏教徒が住んでいれば、その時はたぶん、なんとかやっていけるのではないか」と語っているそうだ。(カネコマサアキ ★★★) 参考文献:「A Monks Struggle」Time Magazine.
■雪の下の炎/Fire under the snow

2008年/アメリカ=日本
出演:パルデン・ギャツォ、ダライ・ラマ14世
上映時間:75分
公開:4月11日(土)より、渋谷アップリンク他、全国順次公開
公式HP:http://www.uplink.co.jp/fireunderthesnow/
■ストーリー
1996年、サンフランシスコで開催された第一回チベタン・フリーダム・コンサート。ビースティー・ボーイズ、ビョーク、オノ・ヨーコ等、豪華ミュージシャンたちに混じり、一人のチベット僧が平和を訴えた。1959年のチベット蜂起で、デモを行ったという罪で投獄されたパルデン・ギャツォである。想像を絶する拷問を受けながら、33年間を監獄で行き抜いてきたその半生と現在の活動を追う。
■レビュー
アリがゾウを動かした。昨年の北京オリンピック聖火リレーでの世界的なデモは、中国政府を話し合いの席に着かせるまでに至らしめた。しかし、今の所、大きな進展はない。あの一連のデモの組織立った展開に、僕は興奮し、感動すらしていた。この30年近くの間、ダライ・ラマ14世の弟子たちは世界に散らばり、それぞれの国で窮状を訴え支援者を増やした。それはとても地道な活動だ。そして、聖火リレーの時を、この時とばかりにデモンストレイトしたのだろう。
(http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1723922-1,00.html)
■関連事項
同時上映『風の馬』。