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■パリ20区、僕たちのクラス/Entre les murs

(c)Haut et Court - France 2 Cinema

パリ20区の中学校を舞台に、教師フランソワと様々な文化的背景持った24人の生徒が、ぶつかり合いながらも真剣に向き合う1年間を生き生きと描く。

2008年/フランス

監督:ローラン・カンテ
脚本:ローラン・カンテ、フランソワ・ベゴドー、ロバン・カンピヨ
原作:フランソワ・ベゴドー「教室へ」(早川書房)
出演:フランソワ・ベゴドーと24人の生徒たち

配給:東京テアトル
上映時間:128分
公開:6月12日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
公式HP:http://class.eiga.com

 
■ストーリー
 
 パリ20区の移民が多く暮らす地域にある公立中学校。赴任して4年になる国語教師のフランソワ(フランソワ・ベゴドー)は新学期初日、担任になった24人の生徒を教室の入口で出迎える。着席してもおしゃべりは収まらず、注意をすれば揚げ足をとる生徒たち。母国語を他に持ち、フランス語が苦手な子もいる。「新しいクラス」は、そうした「問題あり」の様々な生徒たちを集めてスタートする。フランソワは国語の授業の一貫として「自己紹介文を書く」という課題が出すが、問題児のスレイマン(フランク・ケイタ)、反抗的な態度のクンバ(ラシェル・レグリエ)たちは次々と不平不満を口にする・・・。
 
■レビュー
 
 パリの公立中学で、3年生を受け持つ教師とその生徒たちの1年間を追ったこの作品。まず、表現手法のおもしろさに目を引かれる。全編を通じて、実際の学校を使用した教室内のシーンで構成され、主役は元教師であるこの物語の原作者。24人の生徒たちは演技経験のない、その中学校に通う子どもたちで、核になる2人を除き実名で登場する。3台の手持ちカメラが、出演者の生の表情を捉えるように回り、その場の空気感までも映し出す。そうと知らなければ、ドキュメンタリーだと思ってしまう程、リアルな光景が展開する。

 舞台となる移民の多い地区の中学校には、フランス語が苦手な生徒も多い。問題を抱えていたり、反抗的な態度をとったりする生徒、自分の世界に入り込んでいる生徒もいて、クラスの中は混沌としている。その現実が物語を構成していて、熱血教師の奮闘記や、落ちこぼれクラスの成功ストーリーは語られていない。細かな人物設定があり、良く練られた脚本によって繰り広げられる生徒と先生の言葉の応酬は、台本とは思えないほど自然。この作品が成功し、高い評価を得たのは、この圧倒的なリアルさを追求した手法のおかげもあるのだろう。

 もう一つ、学校制度やモノの考えかたといった、いくつかの大きな違いに出くわすことはとても興味深い。印象的だったのは、劇中、教師の方が勢いあまって暴言をはいてしまうシーンだ。教師と生徒が真正面から向き合い、互いに個人の尊厳を主張して真剣に対話する結果、苛立ちや衝突が起きてしまう。徹底的に議論を戦わせるという経験が少ない私たちには、かなり刺激的な展開だ。

 成績会議に校長や教師の他、保護者と生徒の代表も出席するというシーンにも驚かされる。教育の現場にも合議制が取り入れられ、学校に関わるすべての人が教育の内側まで知りうるというシステムには、日本との大きな違いを発見する。

 物語の中で、自己紹介文を書くという課題が出される。15歳の生徒たちが、希望と不安の入り交じった様子で自己を見つめる姿が、見事に写し出されている。学校という場を通過点にして生徒たちが成長していくことは、どこの国も同じ。対立もするが融合もする1年間の真剣なぶつかり合いのあと、混沌とした世界の中に、教師も生徒も希望を見つけられるのだとこの作品は語っていると思う。(★★★☆ 加賀美まき)

 
■関連情報
 
2008年カンヌ国際映画祭、パルムドール(最高賞)受賞作品。原作の原題は『ENTRE LES MURS』(壁の内で)
 
■DVD情報
 
パリ20区、僕たちのクラス [DVD]
紀伊國屋書店 (2011-03-26)
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