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■そして、私たちは愛に帰る/The Edge of Heaven


ドイツ人、ドイツに住むトルコ系移民、そしてトルコ(クルド)人
三つの家族を通し、家族の絆を描くファティ・アキン最新作

2007年/ドイツ、トルコ

監督・脚本:ファティ・アキン(『愛より強く』『太陽に恋して』)
出演:バーキ・ダヴラク、ハンナ・シグラ(『マリア・ブラウンの結婚』『まわり道』)、ヌルセル・キョセ、ジェル・クルティズ

配給:ビターズ・エンド
公開:12月27日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
上映時間:122分
公式HP:www.bitters.co.jp/ainikaeru

 
■レビュー
 
ドイツのブレーメン。妻を亡くして一人暮らしのアリは、知り合った娼婦のイェテルに一緒に暮らそうと持ちかける。アリにはハンブルグの大学で教授をしている息子ネジャットがいるが、2人には共通の話題がない。イェテルはネジャットに、トルコにいる娘には自分が娼婦であることを隠していると告げる。やがてケンカから、アリはイェテルを死なせてしまい、服役。ネジャットはトルコでのイェテルの葬式に参列した後、そのままイスタンブールで彼女の娘を探すことにする。

ドイツで生まれたトルコ系移民の監督ファティ・アキンの新作は、トルコ人、ドイツに住むトルコ人、ドイツ人の三つの家族を通し、家族とは、そしてドイツとトルコについて考える作品だ。映画は三つのパートからなる。第一章「イェテルの死」では、ドイツのブレーメンを舞台に、疎遠になっているトルコ系移民の父と息子、それに関係するトルコ人娼婦イェテルの物語が語られる。父と息子だけという「母」の存在を欠いた家族に、イェテルが「疑似母」 的な存在で迎え入れらるが、その幸せは短い。

第二章「ロッテの死」では時間が少し巻き戻り、イスタンブールで政治活動をしているイェテルの娘アイテンが、母を訪ねてドイツに逃れてくることから話が始まる。アイテンとイェテルも、「父」という存在を欠いた母と娘だけの家族だ。ドイツでアイテンの力になるのが、ドイツ人女性ロッテだ。ロッテもまた「父」を欠く、母との2人暮らし。こうして物語に、「異性の家族を欠く」三家族が出揃う。どの子どもたちも満たされない孤独を抱え、親をうまく愛することができない。

アイテンはトルコ人でありながらまた、迫害を受けるクルド人でもある。出口の見つからない運動を続けているせいか好戦的な性格だ。物語は、強制送還されたアイテンを追ってトルコに渡ったロッテが命を落とすところから、大きく展開していく。政治などの問題も数多く織り込まれているが、やがて話は家族の絆に集約していく。国や民族に自分のアイデンティティを求めるのではなく、身近だが遠い存在である家族に自分のアイデンティティがあることを忘れてはならないというように。しかし三つの家族のうち、二家族はそのただ一人しかいない家族の片割れを亡くしてしまう。第三章「天国のほとりで」で、残る一家族の息子ネジャットは、父アリのもとに帰り、愛を告げることができるのだろうか。映画は深い余韻を残して終わる。(★★★☆前原利行)

 
■映画の背景
 
・現在ドイツには270万人ものトルコ人が住んでいるという。多くは出稼ぎに来た人たちがそのまま居残り、移民として作り上げたコミュニティだ。ドイツに同化しようとする者もいたが、その多くはトルコ人としてのアイデンティティを、トルコに住むトルコ人以上に築く。それには移民側だけの問題ではなく、ネオナチや移民への差別意識といった外的要因も大きかった。

・映画の中で「トルコはEUに加盟すれば変わるか」という議論が、ドイツ人であるロッテの母と、トルコ(クルド)人のアイテンとの間でなされる。トルコ政府と対立する過激派でもあるアイテンだが、EUに加盟すれば言論の自由が得られるとは思っていない。

・旅行者には人気があるトルコだが、その一方でクルド人への弾圧や、言論の弾圧、拷問などが指摘されている。監督のファティ・アキンはプロダクションノートの中で「僕は政治が嫌いだ。ナショナリズムが嫌いだ」「ファシズムは生き延びているだけじゃない。イスタンブールの町ではビンビンしている」と、盲目的に国を支持するトルコ人たちを悲しく感じている。

 
■関連情報
 
・2007年カンヌ国際映画祭 最優秀脚本賞、全キリスト教会賞

・日本公開されたファティ・アキン監督作品は三作。どれも今ならレンタル店で借りられるだろう。ドイツからイスタンブールへのロードムービー『太陽に恋して』、ドイツのトルコ系移民の偽装結婚から生まれる愛を描いた『愛よりも強く』(ベルリン国際映画祭グランプリ)、トルコの様々な音楽を紹介するドキュメンタリー『クロッシング・ザ・ブリッジ〜サウンド・オブ・イスタンブール』がある。

 
■DVD情報
 
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