2009年/ドイツ、オーストリア、フランス、イタリア 監督:ミヒャエル・ハネケ(『隠された記憶』『ファニーゲーム』) 配給:ツイン もちろん現在は自由に表現できる時代だが、この『白いリボン』は、あえてテーマをストーリーの奥に隠している。その上、抑制した表現はモノクロ映像とあいまって、古典となった映画に近い風格を感じさせる。 第一次世界大戦前夜の北ドイツの村で起きた奇妙な事件。ひとつひとつは小さな事件かもしれないが、その奥には不気味な通低音が流れている。物語の語り手となる教師が遠い昔を振り返り、「あれは何だったのだろう」と回想する形で、物語は解決しないまま終わるが、それはハネケ監督が私たちに“考える”ことを委ねているからだろう。事件の裏には子どもたちが関わっていることはわかるが、その理由ははっきりとはわからない。そこを考えさせることによって、なぜ監督がこの時代をわざわざ選んだかが見えてくるのだ。 解答はいくつもあるだろうが、ひとつには1913年に10〜15歳ぐらいだったドイツの子どもたちは、1930年代にナチズムが台頭したときに、それを支えたということだ。厳格で、時には暴力で子どもたちを押さえつける家庭、そしてキリスト教による支配。そうした、「力」による教育が、ナチズムを生んでいったのではないかともとれる。親には服従しながらも、時おり“凶暴さ”が垣間見える子どもたち。“力”によって相手を裁く大人たちのやり方が、子どもたちに現れてしまう。それは現代でも、同じかもしれない。見ごたえのある力作だ。(★★★★☆前原利行)
■白いリボン/Das Weisse Band
第一次大戦前夜に北ドイツの村で起きた事件を通し、
来るべきナチズムの予兆を感じさせる、カンヌのパルムドール受賞作
出演:クリスティアン・フリーデル、レオニー・ベネシュ、スザンヌ・ロタール(『ファニーゲーム』)
公開:12月4日より銀座テアトルシネマにて
上映時間:144分
公式HP:www.shiroi-ribon.com
■ストーリー
1913年7月、北ドイツのある村で、ドクターが落馬したのが事件の発端だった。張られた針金が原因だったが、翌日にはその針金は消えていた。その日、今度は小作人の妻が、男爵家の納屋の床が抜ける事故で命を落とす。秋、収穫祭の日、死んだ小作人の長男のマックスが、男爵の畑のキャベツを滅茶苦茶に切り刻み、憤りをぶつけていた。その夜、男爵家の長男ジギが行方不明になった。発見されたジギは、杖でぶたれて逆さ吊りにされていた。犯人はわからず、村人たちの不信感はつのっていく。一方、村の牧師は自分の子どもたちに、“純心”の象徴である白いリボンを腕に巻かせる。退院したドクターは、隣家の助産婦と情事にふけっていた。事件は解決しないまま冬になり、今度は男爵家の納屋が火事になる事件が起きる。
■レヴュー
第二次世界大戦中にフランスで作られた映画に『密告』というのがある。南仏の村で起きる不可解な事件。疑心暗鬼の不穏な空気が村に流れる。一見、ミステリー映画だが、作品の狙いは違う。当時、ナチスの傀儡政権下だった南仏では、心無い密告によって多くの人たちが逮捕されていた。そのため、ミステリーの装いをしているが、これは“ナチス協力者”についての映画だと当時の人たちはわかっていた。
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