2007年/スペイン、フランス 監督:ホセ・ルイス・ゲリン 配給:紀伊國屋書店、マーメイドフィルム 青年が女性の後を追って街をさまようシーンも、音楽の代わりにさまざまな自然音をコラージュし、音楽以上の効果をもたらしてくれる。セリフらしいセリフが出てくるのは、映画が始まってから1時間を過ぎたころだ。会話が登場すると、映画を観ていた私たちは何だか急にほっとする。今までずっと画面に集中していた反動なのだろう。そのシーンだけ、「ふつうの映画」のように感じるほどなのだから。そして、それまで青年には話し相手もおらず、孤独だったことに気づく。 青年はまた次の日もカフェに姿を現す。6年前に会ったシルビアという女性。はたしてそれは本当の話なのか。それとも…。 映画は不思議な余韻を残す。商業映画らしい演出とはかけ離れているが、退屈はしない。実験的でもあるが、それが鼻につかない。ただ、久々に知的な興奮を与えてくれたことは確かだ。(★★★☆前原利行)
■シルビアのいる街で/Dans la Ville de Sylvia
過去に出会った女性の面影を求めて、街をさまよう青年
セリフを極端に排し、“音”にこだわった斬新な語り口が魅力
出演:グザヴィエ・ラフィット、ピラール・ロペス・デ・アジャラ(『王女フアナ』)
公開:8月7日より渋谷シアター・イメージフォーラムにて
上映時間:85分
公式HP:www.eiganokuni.com/sylvia/index2.html
■ストーリー
ホテルの一室で目を覚ました青年は、考えごとのあと、地図を片手に街を歩き出した。カフェに座った青年は、女性客に声をかけるが、無視されてしまう。2日目、演劇学校の前にあるカフェで青年は女性客を観察し、ノートにデッサンを描く。やがてガラス越しにひとりの女性の姿を青年は見つける。青年は彼女のあとを追い、後ろから「シルビア」と声をかけるが、反応はない。美しい街並みの中で、無言の追跡劇が行われる。
■レヴュー
中盤にかなり長いシーンがある。カフェに座り、ビールを飲みながら他のテーブルの客を眺める青年。人々の会話は途切れ途切れで断片しか聞こえないが、やがてそれがオーケストラの楽器ひとつひとつのように、全体のムードを作っていく。セリフはなく、人々の会話もストーリーを進ませるものではないが、不思議に飽きることはない。自分もそのカフェに座っているかのような気分になってくる見事な音響設計だ。
■映画の背景
■DVD情報