2011年/日本 監督・脚本・編集:アミール・ナデリ 公開: 12/17(土)より シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー 各国の映画祭で高い評価を得ているイラン出身のアミール・ナデリ監督が、純粋すぎるほどの映画への愛情を西島秀俊という俳優を通して解き放った作品だ。ナデリ監督は西島秀俊との出会いをきっかけに、彼をベースに秀二というキャラクターを膨らせていったという。ストレートすぎるほどの台詞で映画への思いを語り、鬼気迫る渾身の演技を見せた西島秀俊は、アデリ監督の思いに見事に応えている。 殴られるほどに映画への愛情が沸き起こる、ある意味無茶とも思える作品。それでも、過去の名作が登場するたびに、ナデリ監督の映画への熱情に刺激され、そこに巻き込まれていく感じだ。秀二が殴られ、顔を腫らし、血まみれになっても目をそらすことができないのは、観客も芸術である過去の映画作品ひとつひとつを、全身で受け止めなければならないと思うからかもしれない。 そのような激しい作品でありながら、劇中も粛々とした空気が流れている。危うい高揚感も最後には静かに地に着いていくのは、秀二を囲む脇の俳優たちの力である。常盤貴子、笹野高史、菅田俊の抑制のきいた演技が見事で、主人公を見守る三人の絶妙な距離感がいい。(★★★☆ 加賀美まき)
■CUT

(c) CUT LLC 2011
愛する映画を守るために、たった一人で世間に立ち向かう男の物語。
アミール・ナデリ監督が描く、数々の名作をオマージュする作品。
脚本:アボウ・ファルマン
共同脚本:青山真治、田澤裕一
出演:西島秀俊、常盤貴子、菅田俊、でんでん、鈴木卓爾、笹野高史
制作協力・配給:ビターズ・エンド
公式HP:www.bitters.co.jp/cut
■ストーリー
売れない映画監督・秀二(西島秀俊)。彼の作品が映画館で上映されることはなかったが、映画への情熱はさめることなく、一人過去の名作の自主上映会を続けていた。そんな折、兄が借金のトラブルで死んだと知らされる。自分の映画資金調達のために、兄がやくざの世界で借金していたことを知った秀二は、兄の死に対する自責の念から、秀二は殴られ屋をすることで借金を返済しようとする……。
■レヴュー
主人公の秀二は、映画の持つ力を信じてやまない男だ。商業的な作品ばかりが作られ、そういう映画しか上映されなくなった世の中を憂い、自ら一石を投じようとあがいている。しかし、自分の映画が陽の目を見ることはなく、兄の死後に残ったのは、2週間以内に返済しなければならない1,254万円の借金。日々の生活も窮迫している彼に返済の当てはなかった。やくざ相手の殴られ屋をするしかない秀二だが、彼には映画への特別な愛情があった。