2010年/フランス、グルジア 監督・脚本:オタール・イオセリアーニ 配給:ビターズ・エンド フランスではプロデューサーに気に入られ、自分の作品制作に取りかかるのだが、商業性を求めるプロデューサーと対立するなど困難が連続し、そこでも思うような映画作りはなかなか進まなかった・・・。 そんな時代のグルジアで手がけた作品が上映禁止となり、活動の拠点をフランスに移したオタール・イオセリアーニ監督が、自身の人生を主人公ニコに重ねて描いた半自伝的な作品である。旧体制下、厳しい抑制や検閲により、芸術家は作品を世に出すことができず、苦悩した暗い時代。大好きな映画を撮る主人公ニコも、抑制を受け、監視、盗聴、ついには投獄までされてしまう。国外追放のような形で故郷を離れ、自由の国フランスへ。ところが思い通りにはいかない現実が立ちはだかる。 そうした冬の時代の出来事にも関わらず、監督は、ユーモアと皮肉を折織り交ぜながらゆっくりと物語を進めていく。細かい説明などまったくないし、クローズアップや切り返しショットを用いないイオセリアーニ監督作品の中には、意図的な緊迫感もない。あくまでもゆるくゆるく、流れに身をまかせるがごとくフィルムは回っていくのである。劇中にも、ゆるくて掴みどころがないニコの作品が登場して、苦笑しまうのだが、強くてメッセージ性のあるものだけが芸術ではないのだと、気づかされる。どんな状況でも、どこででも自分の好きなものを作り続けよう、辛い状況はいつか脱出できるよ。そんな希望のメッセージが隠されているように感じる。 映画の後半でグルジアの今が映し出される。風景は変わってしまっても、グルジアの風情はどこか牧歌的で、人々は素朴なままでほっとする。主人公の若い映画監督を演じたのは、監督の孫であるダト・タリエラシュヴィリ。彼のひょうひょうとした風貌と飾らない芝居がこの作品にぴったりと嵌っている。(★★★☆ 加賀美まき)
■汽車はふたたび故郷へ/CHANTRAPAS

(c) 2010 Pierre Grise Productions
旧ソ連時代のグルジア。抑圧や検閲に嫌気がさし、パリへ亡命した若い映画監督の物語。イオセリアーニ監督が実人生を重ねて描く。
出演:ダト・タリエラシュヴィリ、ビュル・オジェ、ピエール・エテックス
上映時間:126分
公開:2月18日(土)、 岩波ホール
公式HP:http://www.bitters.co.jp/kisha
■ストーリー
旧ソ連体制下のグルジアで暮らすニコ(ダト・タリエラシュヴィリ)は、夢を叶えて映画監督になる。しかし、苦労して完成した作品は上映禁止に。検閲や思想統制により自由な映画作りができないことに耐えかねたニコは、自由を求めてフランスに旅立つ。
■レビュー
グルジアの森の隠れ家に、幼なじみの男女3人が集まる。そこで、映画監督ニコの作品の試写が行われるのだが、時代は旧ソ連体制下。女性が「これは誰にも見せたらだめよ」と一言。にもかかわらず、作品には手を加えないのが結論だ、と彼らは朗らかに誓いあう・・そんなシーンから物語は始まる。