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■キャラメル/Caramel

ベイルートのエステサロンに集う5人の女性たちが抱える秘密や悩みを、
ユーモアと涙で描いた中東版『SEX AND THE CITY』(笑)

2007年/レバノン、フランス

監督・主演・脚本:ナディーン・ラバキー
出演:ヤスミーン・アル=マスリー、ジョアンナ・ムカルゼル、ジゼル・アウワード

配給:セテラ・インターナショナル
公開:2009年1月31日より渋谷ユーロスペースにて
上映時間:96分
公式HP:www.cetera.co.jp/caramel/

 
■ストーリー
 
レバノンのベイルートにある小さなヘアエステサロン。美人オーナーのラヤールは、不倫の恋に悩みながらも彼からの電話を待っている。スタッフのニスリンは恋人との結婚を間近に控えているが、誰にも言えない秘密があった。もう一人のスタッフのリマは、男性よりも女性に関心を持っている。中年女性ジャマルは年老いていくことを紛らわすかのようにサロンに通い、CFのオーディションを受け続けていた。サロンの向かいで仕立屋を営む老女ローズは、ボケて徘徊する姉の世話に忙しい。しかしそんな彼女にも変化をもたらす出来事があった。
 
■レビュー
レバノンはイスラーム教徒とキリスト教徒が半々ぐらいの割合で住んでおり、昔から貿易で栄えた国だ。その首都ベイルートは、内戦が始まる前までは「中東のパリ」とも呼ばれ、アラブ圏の中で西欧化が進んでいた。僕は90年代、内戦が終了して間もないころのレバノンに行ったことがある。ベイルート市内にはまだ銃弾や砲撃の跡が残り、戦争の傷あとが残っていたが、予想に反して洗練されたモダンな街並に驚いた。また、それまで回ってきたカイロ、アンマン、ダマスカスなど周辺諸国の首都に比べ、ベイルートの人たちはどこか教育水準が高そうで、垢抜けていた。

ただし、一見、進歩的なように見えるが、その裏では保守的な部分もしっかりと残っているようだ。本作は、そんな町ベイルートのヘアエステサロンに集う、年齢も背景も異なる5人の女性たちの悲喜こもごもの物語だ。「戦争」や「民族問題」ではない、日常のベイルートを見せてくれる。主人公を男性に設定してしまうと避けられないような問題も、女性たちを中心にすえる事によって、政治色をうまく消し去っている・

「世界は変われど女性の悩みはみな同じ」とばかり、彼女たちが結婚や恋愛から不倫、同性愛、はたまた処女膜再生手術まで、あけすけに語る様子は、中東版『SEX AND THE CITY』(笑)。主人公は妻子ある男性と不倫しているし、ボーイッシュなアシスタントは黒髪の美しい女性と惹かれあう。処女でない女性が結婚に際して処女膜再生手術を受けるというのも、男性の処女信仰を風刺している。レバノンでタブーとされてきたような愛のかたちを、肯定的に描き、また大ヒットしたというのも、この国がずいぶんとリベラルになってきたということだろう(イランじゃ無理だ)。一方で、痴呆の姉妹を抱え、恋をあきらめる老女のしんみりとするエピソードもある。

監督・主演・脚本をつとめるのは、女性監督ナディーン・ラバキー。かなりのエキゾチック美人で、これからの注目株。笑って、そして泣いてという他愛のない人情話ながらも、レバノンという舞台が活きており、興味は尽きない。(★★★前原利行)


■映画の背景

・映画のタイトルとなったキャラメルは、レバノンでは脱毛のために使う、砂糖を溶かしてキャラメル状にしたもの。冒頭でそれを作るシーンが出てくる。

■DVD情報

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