2008年/韓国 監督、脚本:ヤン・イクチュン 配給:ビターズ・エンド、スターサンズ 「すべてを吐き出す」。これがこの映画を最もよく表している言葉だと思う。監督、脚本、主演すべてこなしたヤン・イクチュン監督が、自らの体験をベースにして吐露せずにはいられなかった心の叫び。そのストレートな感情表現は、感情を内に秘めたがる私たちには考えられないほど激しく、暴力シーンもここまで見せるのかと思う程凄惨だ。韓国社会の抱える政治・社会的な問題を意図してはいないが、ベトナム戦争の犠牲者である父親、貧しさ故に崩壊していく家族関係や暴力でしか自分を表現できずにいる若者といった現代社会の歪んだありようも描かれていて、作品は説得力を増している。それゆえ、感情をさらけ出し、ぶつかったあとに漂う閉塞感があまりに切ない。 後半、同じ境遇のふたりは、悲しみを共有できる唯一無二の存在になっていく。傷心したふたりが漢江のほとりで会い、何も言わずに涙を流すシーンが心に残る。ふたりの心の揺れが伝わってくるほどに、なんとも切なく胸が押しつぶされそうな苦しさを感じる。終盤へ向かってのサンフンの心の変化は、すなわちヤン監督自身の心の機微だったのだろう。 打ち合わせ無しで、すべてワンテイクで撮るというヤン・イクチュン監督の手法は、荒げ削りだがリアルでストレートな表現を私たちに突きつけてくれた。すべてを吐き出した次に、ヤン監督がどんな作品に挑むのか楽しみである。(★★★☆加賀美まき)
■息もできない/Breathless

第10回東京フィルメックスで最優秀作品賞と観客賞をダブル受賞
逃れられないしがらみの中で生きる男と勝気な女子高生。
傷ついたふたつの魂が出会い寄り添う様を描く衝撃作
出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン、チョン・マンシク、ユン・スンフン
上映時間:130分
公開:2010年3月20日、シネマライズ他全国順次ロードショー
公式HP:http://www.bitters.co.jp/ikimodekinai/
■ストーリー
債権回収業の取立て屋サンフン(ヤン・イクチュン)は、手加減のない乱暴な仕事ぶりで仲間からも怖がられていた。ある日、サンフンは勝気な高校生ヨニ(キム・コッピ)と出会う。母親と妹を死に追いやった父親への強い憎しみを抱いて生きてきたサンフンと、精神を病んだ父と粗暴な弟との間で問題を抱えていたヨニは、なぜか互いの心が和らぐのを感じる。
サンフンは、かわいがっていた姉の息子ヒョンインがいじめられていると知り、彼を慰めようと、ヨニを呼び出して一緒につかの間の楽しい時間を過ごす。
しかし、サンフンは姉が何度も父の家を尋ね、ヒョンインと父を会わせていた事を知ると、怒りを募らせ父を殴りつける。その怒りの矛先は、新入りのヨンジェ(イ・ファン)にも向けられる。ヨンジェがヨニの弟とは知らないサンフンは、彼の弱腰な態度を罵倒し殴りとばす。ヨンジェはその鬱憤をヨニへの暴力で晴らしていた……。
■レヴュー
■DVD情報
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