2004年/アメリカ 監督:ロス・カウフマン、ザナ・ブリスキ 配給:アットエンタテインメント 旅行人の読者なら、インドに「カースト」という身分差別があるのはご承知だと思うが、これはまた「職業の世襲」とほぼ同じことだ。役人の子は役人、芸人の子は芸人、そしてこのドキュメンタリーの子どもたちのように、売春婦の子ならやがて親と同じ仕事につき、そこから抜け出るのは難しい。今では法律で縛っているわけではないが、社会や親の「常識」がそれを変えるのを難しくしているのだ。もちろん成績優秀な者ならその世界から抜け出るチャンスはある。しかし本作の子どもたちの親のように、貧しい者たちは授業料を払えないし、教育の必要性にも理解がない。 売春窟で生まれた子どもたちの将来は、親の仕事を継ぐ以外になかった。写真家ザナ・ブリスキは売春窟での撮影を続けるうちに、子どもたちにカメラを与えて写真教室を開く。初めて自分たちの可能性を知った子どもたちは、写真を通して将来に夢と希望を抱くようになる。ザナは彼らの将来を案じ、その環境から救い出したいと努力するが、それは苦難に満ちた道のりだった。インドで経験したことがある人ならわかると思うが、お役所仕事はとにかくペースがスローで時間がかかる。子どもたちに必要な書類を取得しようとザナが役所を回るが、途方に暮れる気持ちが良くわかる。 よく「子どもは希望に満ちている存在」というイメージが語られるが、僕はそれは子どもの一面で、「子どもはまたあきらめやすい」という面も見過ごしてはならないと思う。親に「お前は〜になるんだよ」「〜だけやっていればいい」と言われれば、あったはずの選択肢もあきらめてしまう。このドキュメンタリーに出てくる子どもたちもその狭間で揺れている。親たちが夢を見させてくれない分、ザナが「希望」を説く。ただし夢を見させるだけでは結果的に傷つけるだけ。実現する手伝いまでするつもりで、腹をくくらなければならない。人助けにも勇気がいる。 子どもたちのなかで印象に残ったアヴィジット(11歳)という少年がいる。プロの写真家にもその才能が評価され、彼にきちんとした教育を受けさせて機会を与えれば、きっとその才能が開くと期待され、本人もその気になる。しかし彼の母親が「台所での焼死」により死んだことにより、すべてに対して無気力になってしまう。子どもたちが大人たちの犠牲になっている厳しい現実にやるせなくなる。(★★★前原利行)
■未来を写した子どもたち/Born Into Brothels: Calcutta’s Red Light Kids
売春窟に生まれた子どもたちがカメラと出会い、未来へと生きる
アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞に輝いた作品
出演:コーチ、アヴィジット、シャンティ、マニク
公開:11月22日よりシネスイッチ銀座にて
上映時間:85分
公式HP:www.mirai-kodomo.net
■レヴュー
インド有数の大都会ながら、貧困層も多いコルカタ(カルカッタ)。マザー・テレサが活動していたのもここだし、「歓喜の町カルカッタ(シティ・オブ・ジョイ)」なんて小説もここが舞台だった。仕事柄、僕は何度かコルカタへ行ったことがあるが、そんな貧民街に足を運んだことはない。しかしそうした場所は存在している。
■映画の背景
■関連情報
「KIDS WITH CAMERAS」…本作の共同監督でもあるザナ・ブリスキが始めた子供支援基金。世界各地に子どもたちに写真を教える写真家を派遣し、子供たちが撮影した写真の展示会、映画祭への出品、印刷販売などを通して援助資金を作り出す試み。またそれにより子供たちに芸術のすばらしさを教え、子供たち自身が積極的に変化することを支援していく。現在、カルカッタ、エルサレム、ハイチ、カイロなどで活動中。
■DVD情報
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