監督:ルーシー ・ウォーカー 配給:ファントム・フィルム 公式HP:blindsight-movie.com 最初は「感動の押しつけものだったらヤダなあ」と思いながら見始めたが、本作はそんな僕の予想をいい方に裏切ってくれた。美談に終始していたら、きっと僕は興味を失ったと思う。 たとえば本作の主人公たちが「チベット人の子どもたち」ではなく、「漢人の子どもたち」だったら、映画にゴーサインが出ていただろうか? そんなことを考えてしまったのが、6人の子どもたちのうちの一人が、実は漢人であることが発覚した時だ。その少年タシは「チベット人でないことがわかると、盲学校に入れなくなると思って偽った」と言う。それが「チベット人の子どもたちが〜」というところにこの映画のヴァリューがあることを、僕に気づかせてくれた。また、そのタシは長いことストリートチルドレンで、実の両親に会いに四川省に行くシーンがある。しかしここでも「感動の再会」より、「ずっと捜していた(実は子どもを人に売った)」という親の嘘を見抜くタシの悲しさが勝ってしまう意外性が働く。 そして登頂が始まると子どもたちを囲む大人たちの価値観の対立が浮かび上がる。登山家たちは「登頂」そのものに目標を置き、登頂できなければ失敗と考える。しかし盲学校の教育者たちは、「がんばったという過程」で十分目的を果たしたと感じる。競争社会的と平等社会、西洋と東洋、母性と父性といった中でのエゴの対立は、登頂を最後までするか決定する話し合いで、肝心の子どもたちの意見を欠いて続けられる。当初の目的とは違うが、そこが一番面白い。 ヒマラヤのすばらしい映像も必見だ。カメラマンの苦労がしのばれる。(★★★☆前原利行) ・目指すラクパリ峰はチベット側からアクセスできる人気の場所らしい。日本からツアーも出ている。
■ブラインドサイト〜小さな登山者たち〜/Blindsight

2006年/イギリス
ドキュメンタリー
出演: チベット盲学校の子どもたち、サブリエ・テンバーケン、エリック・ヴァイエンマイヤー
公開:7月、シネマライズほかにて
上映時間:104分
■ストーリー
チベットのラサで盲人学校を運営している盲目のドイツ人教育家サブリエ・テンバーケンは、世界的に有名な盲目の登山家エリック・ヴァイエンマイヤーに一通の手紙を出す。彼は盲人初のエベレスト登頂成功者だった。それが発端となり、盲人学校の子どもたちを連れてヒマラヤ登山に挑むプロジェクトが始まる。6人の子どもたちが名乗りを上げた。訓練、そして登頂が始まる。彼らが目指すのは標高7000mのラクパリ峰だ。苦難の中、彼らが到達したものは?
■レヴュー
■映画の背景
・チベットに限らないが、世界の多くの地域ではいまだ障害者に対する偏見は強い。彼らは身体的に負い目を持つだけでなく、「負の存在」として見なされ、精神的にも社会から苦しめられる。チベットでは「前世の行いが悪いから、そうなった」と見られてしまうようだ。
■関連情報
・この映画の主題歌はタートルズのヒット曲「ハッピー・トゥゲザー」。劇中でチベットの子どもたちによって歌われるほか、エンディングでオリジナルのタートルズ版が流れる。映画ではよく使われる印象的な曲で、ニコラス・ケイジ主演の『アダプテーション』、『ジョルジュ・バタイユ ママン』、『フォーチュン・クッキー』、『ミュリエルの結婚』などでも使われている。ウォン・カーワイ作品の『ブエノスアイレス』は英語タイトルが「Happy Together」で、エンディングにもこの曲が流れるのだが、これは香港の歌手のカバー。何でもウォン・カーワイは、フランク・ザッパ&マザースのフィルモアのライブ版(ロック通には有名)の「Happy Together」を使いたかったが許可がとれず、そのライブ版をカバーしたとか。