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■オアシス/Oasis

2002年/韓国

監督・脚本:イ・チャンドン(『ペパーミント・キャンディー』)
出演:ソル・ギョング(『ペパーミント・キャンディー』)、ムン・ソリ(『ペパーミント・キャンディー』)

配給:
シネカノン
上映時間:132分
公開:2月7日より
Bunkamuraル・シネマにてロードショー
 
■ストーリー
 
 前科3犯のホン・ジョンドゥが釈放された。ひき逃げによる過失致死による2年6カ月の刑。その間に家族は引っ越していた。兄夫婦と母親が住む新しい家に戻っても、ジョンドゥを歓迎するものはいない。ある日、ジョンドゥはひき逃げして死なせてしまった男のアパートを訪ねる。部屋は引っ越しの最中で、男の息子夫婦は脳性麻痺の妹コンジュを残して出ていくところだった。夫婦はコンジュの障害を利用して、援助が出る障害者家族用のきれいなマンションに引っ越していくところだった。残されたコンジュとジョンドゥの出合いはそこから始まった…。
 
■レヴュー
 
 『気まぐれな唇』『悪い男』と、今年前半に公開される韓国映画は、強引に僕を引きつけて離さないものがある。もちろんハズれもあるが、「切迫感」をこれほど感じさせてくれる映画は、いま韓国映画が一番だ。
 さてこの『オアシス』だ。「面白い」とか「つまらない」ではなく、正直言って「何だか凄いものを見てしまった」という2時間だった。主人公は「知恵遅れ」というと言い過ぎたろうか。普通の人よりも思慮が足りず、子どものようにおもむくままに行動し、周囲に面倒がられる男ジョンドゥ。家族もそんなジョンドゥを持て余している。もう1人は脳性麻痺の女性コンジュ。兄夫婦から捨てられるように古いアパートに置き去りにされ、面倒は隣人にまかされている。コンジュも家族から持て余まされた存在なのだ。そんな二人がアパートの一室で出合う。最初は己の欲望のはけ口としてコンジュを襲ったりもするジョンドゥだったが、次第に彼女のことが気になってくる。世間からかえりみられることのない二人の間に愛が芽生えてくるのだ。コンジュの聞き取りにくい不自由な言葉も、同じ思いのジョンドゥには通じる。コンジュの部屋は、世間という砂漠の中の「オアシス」になる。
 主役の二人の演技がすばらしい。解説を読むまで、二人とも『ペパーミント・キャンディー』に出ていた人とは気づかなかった。その演技のリアルさに心地悪さと良さがないまぜになりながら、僕は画面に釘付けになった。「障害者」問題はデリケートで、映画評でもそのことについては書きにくい。僕も含め、この社会では障害者と向き合う接点があまりないからだろうか。街中で障害者と出合ったら、視線をそらすのが当たり前になっている世の中(嫌悪感からではなく、見つめないことが社会上の「礼儀」となっている)だから、映画の中(まして演技)とはいえ、彼らをこれほど正面から見つめることはない。そこに作者の観客に対する挑戦的な部分がある。もっとも「障害者=心は美しい」というパターンを作者は言いたい訳ではなく、「社会から視線をそらされている人々(必ずしも外見が理由ではない)に視線を注いで欲しい」というのがテーマだろう。
 最後に、どうもこの映画のチラシの宣伝文句に違和感を感じる。「美しい純愛」「あたたかい希望」といった言葉がちりばめられているが、見かけ上のそうしたものを拒否するため、あえてこうした設定を監督は選んだような気がするのだから。それでは客は入らないのだろうが。キツい映画だが、見る価値は十分ある。
★★★★(前原利行)



 『ペパーミント・キャンディー』(★★★★☆)に心酔して以来、首を長くして待ち望んでいたイ・チャンドン監督の最新作をついに観ることができた。
 社会から疎外されている、重度の脳性麻痺障害を持った女と前科のある少し知恵おくれの男。恐らく映画史上誰も描いたことのない設定ではないだろうか。観賞後、パンフレットを見て仰天したのだが、主演の二人は『ペパーミント・キャンディー』の主演の二人ではないか!<デニーロ・アプローチ>のごとく、徹底的に役作りをしていて、彼らだとは全く気付かなかった。とりわけ障害者役のムン・ソリには形容する言葉がみつからない。
 映画は『期待通り』の作品ではあったが、いい意味で僕の期待を裏切ってはくれなかった。
 細かいことを言うと、障害者をとりまく環境や世間や社会をストレートに、時に風刺を込めて描いているが、それはかなりありきたりで、正論すぎて退屈な感じがする。<障害者>対<健常者>、<弱者>対<強者>、哀れな障害者、無理解な家族、といった今まで繰り返されてきたクリシェや構図にはちょっとうんざりしてしまうのだ。
 エピソードも『金八先生』の中に出てきた保と雪乃の十代の恋愛と妊娠のエピソードのごとく、二人の行動で家族の軋轢が生じる云々といったような、使い古された、型にはまった盛り上げ方がどうも気になる。
 欲をいえば、その先の、二人の愛の育み方や生活をじっくり見せてほしかった。オアシスという幻想と現実の境界(そのシーンの何と詩的なこと!)をいつまでも漂回していてほしかった。そして障害者コンジュの「人生」と「個性」が今一つ見えてこなかったことが少々残念だ。
 それでもこの映画の存在感は圧倒的だ。近年まれにみる力強いラブストーリーであることは間違いない。強烈なボディーブローを受けることに相当な覚悟が必要だ。
★★★★(カネコマサアキ)
 
■関連情報
 
・2002年のヴェネチア映画祭では監督賞(イ・チャンドン)、新人俳優賞(ムン・ソリ)、国際批評家連盟賞の3賞を受賞。その他にもその年の韓国の主要な映画賞を受賞している。
 
■DVD情報
 
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