■この素晴らしき世界/原題「MUSIE SI POMAHAT」
製作年/製作国:2000年/チェコ
監督:ヤン・フジェベイク(「ビッグビート〜ジャッカルの時代〜」「心地よい居場所」)
原作・脚本:ぺトル・ヤルホフスキー(「輪になって歌おう」「心地よい居場所」)
出演:ボレスラフ・ポリーフカ、アンナ・シィシェコヴァー、ヤロスラフ・ドゥシェク、チョンゴル・カッシャ
配給:大映
公開:終了
→http://www.iwanami-hall.com/
アカデミー外国語映画賞ノミネート
■ストーリー
第二次世界大戦時のチェコ。ヨゼフとマリエ夫婦は隣人のユダヤ人一家と親しく付き合っていたが、一家はナチスの脅威を恐れて村を出ていくことに。しかしある夜、一家の息子・ダヴィドが2人のもとに逃げ込んでくる。家族はナチスに捕らえられ、ダヴィドは友人と強制キャンプを抜け出してきたのだ。迷いながらも彼をかくまうことにしたヨゼフとマリエだったが、夫婦の家にはナチスシンパの友人ホルストが頻繁にやってくる。小部屋にダヴィドを隠しながら、身の安全のために親ナチスを装い暮らしていたある日、ホルストがナチス幹部のケプケに部屋を貸すよう言ってきた。咄嗟に「子供が生まれるから部屋が必要なの」と嘘をつくマリエだったが、夫婦に何年も子供ができないことはホルストはよく知っている。その嘘を通すため、ヨゼフが考え出した案は……。
■レビュー
とても爽快な気分! 戦争という暗い話題を扱った映画なのに、まさしく生きるか死ぬかの状況をユーモアたっぷりに描いた秀作。ユーモアというと軽く感じるかもしれないけど、ここで描かれる人間関係はそれ以上に、戦争のばかばかしさやリアルな人間心理を浮かびあがらせている。身の危険を知りながらもダヴィドをかくまうことにしたヨゼフとマリエ夫婦の、助けてやりたい気持ちと、自分が助かりたい気持ちに歯軋りし、頻繁にやってくる便宜主義で楽天家のホルストがいかに鬱陶しく思えることか! ヨゼフにナチシンパを勧めたりマリエに言い寄ったり、思いのままに行動していたホルストは、戦争の終わりにヨゼフに助けられる。ダヴィドを助けたヨゼフとマリエは、ダヴィドによって助けられる。戦争という非常事態の中で、一体本当の味方は誰なのか、そんなばかげた問いがおのずと頭に浮かんでくる。何でもいいじゃないか、大切なのは生きること。生き延びることなのだ。それが人間の真意であるはず。瓦礫の中を、乳母車を引きながら微笑むヨゼフの晴れやかな表情が、ただそれだけを物語っているような気がした。
★★★★(竹内詠味子)
■監督インタビュー■
35歳のヤン・フジェベイク監督はチェコで3作の長編を撮り、本作は第4作品目。逆境のなかにちりばめたユーモアと緊張感のあふれる作風について、話をしてもらった。
「今まで一緒に映画を作ってきた脚本家のペトル・ヤルホフスキーもユーモアが大好きです。『良薬は口に苦し』で、苦味を消すために甘いものをつけないと、人はなかなか飲んでくれません。映画もその通りです。人に笑ってもらうには、辛いテーマを甘くしなければなりません。チェコの有名な作家・ハシェックの絵本に第一次世界大戦の物語があり、戦争という暗い題材にもかかわらず笑わせてくれる本で、チェコで大人気です。暗い時代に笑うのは矛盾かもしれないけど、それはチェコのユーモアだと思います。実はこれまで作った3作品については、ストーリーラインがない、とよく言われました。今回、脚本のペトルはこのような素晴らしいストーリー性のある作品を書きあげました。観客は登場人物よりもその場の状況を把握して雰囲気を感じ取っていますから、緊迫感を作り出しサスペンス的なものを加えれば、より観客を楽しませることが出来ます」
フジェベイク監督は、脚本を担当したペトル・ヤルホフスキーとコンビを組んで作品を撮り続け、本作ではペトルの親戚が経験した戦争体験からアイデアを練ったという。実話をもとに練り上げたそのアイデアについて、こう語る。
「脚本のペトルと知り合ったのは14歳、一緒に高校を卒業し、家族同士でも付き合いがあり、互いの結婚の証人になるほどの親友です。同じプラハ芸術大学の映画学部で学び、ほとんど同じ道を歩んできたので、自然と物事の感じ方が似てきました。このストーリーのなかに、ドイツ軍の幹部が戦争で次々と息子を失う設定がありますが、それはペトロのおじいさんが戦争中に逮捕されていたときの監視官がモデルになっています。私たちは映画を作るとき、実話からスタートして自分たちなりに物事をつけ加えていきます。しかし、一番大事なのはやはり実話でしょうね」
(聞き手:竹内詠味子 2002年4月23日 岩波ホールにて)
■DVD情報
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