■過去のない男/Mies vailla menneisyytta
製作年/製作国:2002年/フィンランド
監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:マルッキィ・ペルトラ、カティ・オウティネン
配給:ユーロスペース
上映時間:97分
公開:終了
2002年カンヌ映画祭グランプリ、主演女優賞受賞
■ストーリー
夜のヘルシンキにやってきた1人の男。彼は公園で暴漢たちに襲われ大ケガをし、それと共に自分の記憶もすべて失ってしまう。男は港湾のコンテナで暮らす一家の助けを受けケガは徐々に回復していくが、自分の名前すら思い出せない。そんな中、彼は偶然知り合った救世軍の女イルマと出合い、恋をするようになる。
■レヴュー
この「旅シネ」を読んでいる人がどれくらいいるのかわからないのと同様、アキ・カウリスマキのファンが世間にどのくらいいるのか僕にはわからない。『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』だけしか知らない人も多いだろう。それでも彼の映画を何気なく見ていくうちに、いつのまにかファンになっている人もどこかに確実にいるはずだ。
今回の新作(と言っても映画の隅々に至るまで時代を特定できるものはない)もいつも通りのタッチで、内容もとくに96年の『浮き雲』の続編と言ってもいいくらいの出来になっている。終始、無表情な主人公たちが淡々と物語を進めていくのも変わらない。感情をオーバーに表現するアメリカンな映画ばかり見ていると、省エネ演技のように見えるが、私たちの生活の中では、実際、感情表現なんてそんなものだろう。悲惨な目にあっても周囲の人々のちょっとした暖かい心で、小さなしあわせを見つけていくというこの映画。大味なハリウッド映画なら陳腐な話になりがちだ。しかしこのカウリスマキ作品では俳優の演技に頼らず、またセリフにも頼らずに、幸福感に酔って映画館を後にできる仕上がりになり、「ちょっとしたイイ人情話」を作ることに見事に成功している。
男が古めかしい音楽を演奏する救世軍のバンドに、ロックやブルースを教えて演奏させ、それが大ウケする話。また男が自分の名前も言えないことから警察に収監され、凄腕弁護士の活躍?により解放されるエピソードなど、大爆笑ではないがクスっと笑えるユーモアのサジ加減がいい。この映画で一番ウケたのが、男がヘルシンキへ戻る列車の食堂車のシーン。恋人の元へと戻る男に、給仕が「サケは飲みますか?」と聞く。男がしみじみ食べているのは寿司。そしてバックにはなぜか日本語の歌!(クレイジーケンバンドの「ハワイの夜」)ここだけ何だか日本映画を見ているような気になってしまった。★★★☆(前原利行)
■映画の背景 Behind the Movie■
カウリスマキ監督はイスケルマというフィンランドで流行っているムード歌謡が大好きだとか。これがフィンランド語であるという以外、日本的な演歌テイストな歌謡曲なのだ(60〜70年代の)。この映画の雰囲気が邦画ぽいのもそのせいかも。92年の作品『ラ・ヴィ・ド・ボエーム』でも日本語の「雪の降る街を」が流れていたのが印象的。
■関連情報■
ユーロスペース →http://www.eurospace.co.jp
恵比須ガーデンシネマ →http://www.cineplex.co.jp
■DVD情報
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