ここのところ試写室では、「まあいいんじゃない」程度の映画が続いていたが、やっと「当たり」の映画に出合った。それがこのブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』だ。この映画を一言でいうなら、ブラジル版『仁義なき戦い』、または『グッドフェローズ』。実話を元にしており、ギャング映画は苦手という人でも、これがブラジルの現実の一部だと知るにはいい機会だろう。ブラジルのリオ・デジャネイロ郊外にある「シティ・オブ・ゴッド」と呼ばれる公営住宅地(=徐々にスラム化)を舞台に、60年代後半から70年代末に至る少年ギャングの抗争を、3つのパートに分けて描いている。陰惨な話だが、バイオレンスとユーモアが同居し、小気味よいストーリーテリングに見ていてすぐに引き込まれる。音楽、カメラワークもすばらしい。
このストーリーの語り部は、カメラマンを夢見る少年ブスカペだ。観客が感情移入できるただ一人の人物で、彼だけがこの陰惨なバイオレンスの世界と我々をつなぎ止める接点となる。しかし実際の主人公は、そのブスカペと同年代のギャングのリトル・ゼだ。60年代後半、「優しき3人組」と称する町のチンピラたちがモーテルを襲撃。リトル・ダイス(推定年齢12歳)を見張り役として連れて行くが、銃を渡されたダイスはパシリに飽き足らず暴走。無抵抗の人々を次々に射殺。人を殺す快感に歓喜の表情を浮かべる姿は、映画とわかっていても背筋がゾーッとする。

ダイスはその後、名をリトル・ゼと改名。片腕のベネと共に悪事の腕を磨き、70年代、18歳になるとシティ・オブ・ゴッドに戻ってくる。「邪魔なヤツはブッ殺せ!」と大量殺戮を実行し、1日にして町のギャングNo.1の地位に。強盗よりもヤクの売買の方が儲かると思いつくと、その日のうちに売人組織を制覇。絶頂期を迎える。ところが世の中、いつの間にか「ラブ&ハッピー」な70年代。相棒のベネはオシャレ、ロック、サーフィンなどに目覚め、ヤクザ稼業に嫌気がさす。小学生からひたすらマジメに悪事を働き続けてきたが、気がついたら青春まっただ中。人を殺すより、女の子とデートをしたり、ディスコで踊る方が楽しいのだ(という視点も面白い)。ところが悪事に精進する日々を送っていたリトル・ゼは、遊び仲間もいない、彼女もいない、面白い話もできない。おまけに顔も悪くて女に相手にされない。ディスコパーティで所在なくひとりウロウロする様は、ただの「モテない男」であわれ。ところが一発の銃弾がベネの命を奪ってからは、もう彼を止めるものはいなくなった。シティ・オブ・ゴッドを二分する大抗争の始まりだ。
その抗争の中でメキメキと力をつけてきたのがオキテ無用の「ガキ軍団(推定年齢7〜12歳)」。かつてリトル・ゼにヤキを入れられたこともあるが、戦闘員確保のために次々と銃を渡される。ちなみに、この「ヤキ入れ」のシーンは、アメリカでは絶対映画化不可能。12歳ぐらいの少年に銃を渡し、「お前も男なら、度胸を試してみろ!」と10歳ほどの子どもを処刑させるんだから。銃を向けられた子どもがマジで泣いているように見え、かなりショッキングなシーン。命はここでは何の価値もない。この後も話は続くが、とうていここでは書き切れない。とにかく映画館へ行って体感するべし!
★★★★(前原利行)
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