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■少女の髪どめ/Baran

2001年/イラン

監督:マジッド・マジディ
出演:ホセイン・アベディニ、ザーラ・パーラミ、モハマド・アミル・ナジ(『運動靴と赤い金魚』の父役)」

配給:日本ヘラルド映画
上映時間:96分
公式サイト→
http://www.herald.co.jp/movies/kamidome/

2001年モントリオール映画祭グランプリ
 
■ストーリー
 
 冬のテヘラン。17歳の若者ラティフの仕事は、建設現場でのお茶くみや買い出しなどの下働き。ある日、工事現場で転落事故があり、アフガン人労働者のナジャフが骨折する。働けなくなったナジャフの代わりに、その息子であるという少年ラーマトがやってくる。しかしラーマトは力仕事ができず、お茶くみの仕事をラティフと交替することに。楽な仕事を奪われたラティフは面白くない。しかし偶然、ラティフはラーマトが実は女の子であることを知る。そして彼の心の中に、淡い恋ごころが芽生え始めた。
 
■レヴュー
 
 『運動靴と赤い金魚』で日本でも人気が高い、イランのマジッド・マジディ監督の待望の新作が公開される。今回はイラン映画にしては珍しく、若者の恋ごころを描いた作品だ。
 物語の背景には、イランに不法滞在せざるをえないアフガン難民の問題が盛り込まれているが、決してそれらをストレートに表現してはいない。ドラマチックな演出を避け、セリフに頼らずに登場人物の内面を現わす手法は、どこかサイレント映画を思わせる。少女バランは口をきかないし、主人公ラティフも自分の感情や考えを言葉で表わすのは苦手だ。主人公のラティフがラーマトが女の子だと気づいてから、話が俄然面白くなってくる。今まで嫌って意地悪をしていた相手なのに、急にオシャレをしてラーマトの出勤を心待ちにするようになる。正体がバレないようにと影ながら気を使ったり、彼女の失敗を弁護したり。そして彼女を警察からかばって逃がし、連行までされてしまう。
 原題の『バランBaran』とは、少女の本名。ペルシア語で「雨」という意味だという。乾燥地域が多いイランでは、雨は「恵み」や「豊かさ」の象徴だ。映画のラスト、主人公の2人の上に降るのは雨だ。そしてそれは、大地に春がやってきたというだけでなく、アフガン難民が過ごした「寒い冬の時代」の終わりを告げる「希望の雨」でもある。少女が雨に濡れた土の上に残した足跡は、主人公ラティフの心の中で、いつまでも消えることはないだろう。若者の初恋は雨と共に終わるかもしれないが、そこに哀しみはなく、どこかあたたかい印象を残すのが救いだ。
★★★☆(前原利行)

 日本人ラッパーにもいそうな顔立ちのイラン人青年は、自分の仕事を奪った憎たらしいアフガニーが実は女の子だったことを知る。その時の描写には、主人公の青年と一緒に引き込まれるだろう。その後の彼の豹変ぶりが可笑しく、その娘のためにと全力を尽くす。彼女のことを監督は、「自らを語る機会と手段を持たないアフガンの人々の象徴」だという。建築現場で、従業員との賃金交渉で時に怒鳴り合い、発注元からはケチをつけられ、労働調査官の手入れに怯えながらアフガン人を雇う現場責任者のオヤジさんもまた、監督からの大きなメッセージを背負わされた重要な登場人物。
★★★☆(今野)

 
■関連情報
 
・アフガニスタンの内戦が終了し、一部は帰還しはじめたが、いまだに200万人ものアフガン難民がイランに暮らしているという。過酷な生活環境から起す不法労働や犯罪は、イランでは大きな社会問題となっており、なかにはあからさまに差別が起きたりするケースも多い。また、結果的に彼らがイラン人の低賃金労働者の仕事を奪う形になり、摩擦が生じることもあるという。顔つきも東洋人に似たハザラ系アフガン人に間違えられ、石を投げられたり、暴行を加えられた日本人バックパッカーの話も聞く。
・イランにおけるアフガン人難民を描いた映画には、『少年と砂漠のカフェ』('01)(アボルファズル・ジャリリ監督)、『サイクリスト』('89)、『カンダハール』('01)、『アフガン・アルファベット』('02)(ともにモフセン・マフバルバフ監督)などが、日本でも公開されている。
・本作の製作は'01.9.11以前。当時、アフガンはタリバンの支配下にあった。
・マジッド・マジディ監督にとって、モントリオール映画祭グランプリの受賞は、『運動靴と赤い金魚』('97)と『太陽は、ぼくの瞳』('99)に続いて3度目。
・ヒロインを演じたザーラ・パーラミはマシュハド(『旅行人ノート アジア横断』参照)の難民キャンプで見い出された。
 
■映画の背景
 
 字幕ではわからないが、舞台となる建設現場ではさまざまな民族出身の人々が働いている。イランといえばファルシー(現代ペルシア語)を話すペルシア人のイメージが強い。もちろんこれは公用語だが、この言葉を母語とする人々は、イランの58%(パンフレットによる)。主人公ラティフや現場責任者のメマールはアゼリー人でトルコ語系だ。イランではトルコ語系の言葉を話す人々は25%を占めている。建設現場で働くアフガン人労働者は、ダリー語と呼ばれるアフガニスタンで使われるペルシア語を話す。他にもこの現場にはクルド系イラン人もいるらしい。
 
■DVD情報
 
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