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■しあわせ色のルビー A price above rubies

1998年/アメリカ

監督・脚本:ボアズ・イェーキン(『タイタンズを忘れない』)
製作:ローレンス・ベンダー&ジョン・ペノッティ
出演:レニー・ゼルウィガー
   クリスファー・エクルストン
   ジュリアナ・マルグリース
   キム・ハンター
配給:プレノンアッシュ
上映時間:117分
 
 
■レヴュー

 映画の見方にはいろいろあると思うが、そのひとつに知らない世界を垣間見せてくれることがある。この作品は『旅行人』読者とはあまり関係なさそうな、よくある「女性の自立もの」の映画に見えるが(確かに物語の主軸はそうだが)、僕にとっては、映画の舞台ではありふれたニューヨークでも、そこに生きるエスニックコミュニティーを描いたこの映画は、いつものニューヨークとはまるで別の国の話のように見えて興味深かった。

 舞台は現在のニューヨークのユダヤ人街。信仰心のあつい学者メンデルと結婚し、一子をもうけている主婦ソニアが主人公だ。冒頭の回想シーンで物語られるように、ソニアはたぶん東欧系のユダヤ人の移民。彼女がいつごろアメリカに渡ったのかは説明されないが、ユダヤ人コミュニティーの中の世界しか知らないようなので、ある程度の年齢に達してからかもしれない。また彼女のセリフから、親族がホロコーストの犠牲になっていることもうかがえる。映画の前半はほとんどこのユダヤ人コミュニティーの中で話が進む。

 住んでいる人々の1/5はユダヤ人であることから、ジューヨークとも呼ばれるニューヨーク。しかし実際に厳格に戒律を守って暮らしているユダヤ人は少ないようだ。だからその中で黒い帽子に黒いコートを着て、ヒゲをのばしている男性の一団は目をひく。彼らは日々の生活は神に捧げるものとし、ラビという宗教的指導者のもとに戒律や安息日、食事の習慣を守り、現代とは思えないほど伝統的な生活を送っている。女性の役割はというと、家庭を守るもので社会的な活動はあまり良いものとされない。男子が生まれるとラビの指導のもとに割礼の儀式が行なわれる。

 シナゴークでの礼拝や、宗教学校の様子、宝石の売買にいそしむ姿。本からの知識では知ってはいたが、そうした彼らの生活がヴィジュアルで見られるという点が興味深い。ユダヤ人が金融だけでなく宝石関係に強いことは知られているが、ソニアの両親もそうした仕事を営んでいて、ソニアの宝石鑑定眼が優れているという話の展開につながっていく。そう言えば、ブラッド・ピットが出て話題になった映画『スナッチ』でも、冒頭に宝石商から宝石を強奪するシーンがあるが、あの舞台もロッテルダムのユダヤ人街だった。

 映画はそうした閉鎖的なコミュニティーの中で暮らすことに苛立ちを覚え、生きる喜びを求めてそこから脱していく主婦ソニアと周囲との軋轢を描いていく。信仰深い夫にラビの元へ連れていかれるソニアだが、彼女の心の奥に宿る熱いパッションは消えることはない。神よりも生身の人間を肯定し、夫に自分と神はどちらが好きなのとつめよるソニア。また彼女は善良な夫にこうも言う。「美は善悪の両方の面を持つ」と。

 主人公のソニアには『ブリジット・ジョーンズの日記』や『ベティ・サイズモア』で、日本でもようやくブレイクした感のあるレニー・ゼルウィガー。共演は『いつまでも二人で』『姉のいた夏、いない夏』などで印象が弱い男を演じ、それが逆に印象的?というクリスファー・エクルストン、TV『ER』のキャロル・ハサウェイ役でファンも多いジュリアナ・マルグリースなど。また映画ファンには、オリジナルの『猿の惑星』でコーネリアスの恋人・ジーラを演じたキム・ハンターが、ノー・メイクで登場(当たり前)しているのも見逃せない? 興行的には地味な作品だろうが、僕にとってはなかなか拾い物の作品になった。
★★★(前原利行)


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