■パンチドランク・ラブ/Punch-drunk Love
2002年/アメリカ
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン(『ブギーナイツ』『マグノリア』)
出演:アダム・サンドラー、エミリー・ワトソン、ルイス・ガスマン、フィリップ・シーモア・ホフマン
配給:東宝東和→http://www.eigafan.com
上映時間:95分
公開:7月より恵比須ガーデンシネマほかにて公開
公式サイト→http://pdl.eigafan.com/
2002年カンヌ国際映画祭最優秀監督賞
2002年トロント映画批評家協会 最優秀監督賞&最優秀助演女優賞(エミリー・ワトソン)
■レヴュー
『ブギーナイツ』『マグノリア』と話題作を立続けに発表しているポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)監督(くれぐれも『バイオハザード』の監督ポール・アンダーソンとまちがえないように)の新作が、この『パンチドランク・ラブ』だ。おもに欧米以外の映画を紹介するこの「旅シネ」で、「何でこの映画を取り上げるの?」と試写状が送られてきて思ったが(旅のシーンはハワイぐらい)、ある一点でナットク。それは下の「映画の背景」の欄を読んで欲しい。
今まで3時間前後の長尺の映画を発表してきたPTAだが、今回は今までのような群像劇ではなく、おもに1組のカップルのラブストーリーに話を絞っており、長さも1時間半と手ごろ。とはいえ、ふつうのラブストーリーであるはずがなく、どこかデビッド・リンチのラブストーリー『ワイルド・アット・ハート』を観た時のような、居心地の悪さを感じる。「恋に落ちている人の高揚感は本人以外にはわからないもの」という鉄則を、映画で見せられているような感じだからだ(この映画がカンヌで賞を取った時の審査委員長がデビッド・リンチだ!)。また音楽も雰囲気を盛り上げるのと正反対に、わざと落ち着かない抽象音楽のようなものを流したり、2人の恋が燃え上がるシーンでは陳腐な歌詞のラブソングを流したりと、居心地の悪さをあおっているのだ。ただ、狙いはわかるのだが、いかにも作り込み過ぎているのが鼻につき、何だか「こんなこともできるんだぞ」と自慢されているような気にもなる。もっとさりげなくてもいいのに。
それよりは、主人公がテレホンセックスに電話をして、あとでそれをネタに恐喝されるというサイドストーリーが面白い。いかにもありそうな話で、ちょっとコワイ。このユスりの元締め役がフィリップ・シーモア・ホフマン。「彼の出ている映画に駄作はない(『パッチアダムズ』を除く)」という鉄則があるように、難はあるものの、全体としては心に引っかかる映画となった。あ、あとこの映画を見ていてエミリー・ワトソン主演の『アメリ』も見てみたくなった(『アメリ』は当初、エミリー・ワトソン主演で映画化が進められていた)。ときどき表情が「アメリ」になるのがコワい(ヤバい)。
★★☆(前原)
マイレージのキャンペーンを電話で確認する男がいきなり出てきたので、「俺か?」と思う。本作を含むPTAの過去3作のプロデューサーは「今度は明るくてスウィートな作品に仕上げたかったのでは……」といっているそうだが、そうはなっていない。不穏な雰囲気で始まり、ジェレミー・ブレイクのサイケなアートワークを差し挟みながら、不穏なまま最後までいってしまう。途中、ハワイの海辺の夕暮れに主人公のカップルが一杯やるシーンだけホッとできるのだが、その前あたりでかかるトボけた歌はロバート・アルトマン監督『ポパイ』のために書かれ、オリーブ役の人が歌った『He needs me』。これなどは、前原さんがいくらケチつけようと僕は好きだ。それと、『パッチアダムズ』も。
★★☆(今野)
■映画の背景
主人公バリーにはモデルがいる。パンフレットによれば、カリフォルニアに住むある男が、1999年にヘルシーチョイス社が行なったマイレージ・キャンペーンを利用して、驚くべきマイル数を獲得したというニュースが発端だ。彼は「対象商品のバーコードを10枚集めて送ると500マイルのマイレージを獲得、ただし早期応募特典としてその月末までに送るとマイルがダブルになる」、つまり「バーコード10枚で1000マイル」になることに目をつけた。
彼は「夏休みに家族をヨーロッパへ連れて行きたい」と考え、できるだけ同社の安い商品をとスーパーの中を探し、とうとう1コ25セントのチョコプリンを見つける。これなら2.5ドルで1000マイルだ(2万マイルなら50ドルですむ)。町中のプリンを買い占めた彼だが、バーコードをはがす作業が妻と2人では締め切りに間に合わない。そこでプリンを救世軍に寄付することを条件に、手伝ってもらったという。3000ドル以上を注ぎ込み、獲得したマイレージはなんと、125万マイル。アメリカからヨーロッパへは31往復できるという。彼はこの件でメディアで取り上げられ。一躍有名人になったとか。
日本でもこんなキャンペーンやって欲しいな。
■関連情報
・パンチドランク・ラブとは「強烈な一目惚れ」の意。
・主演のアダム・サンドラーは「サタデー・ナイト・ライブ」でブレイクした人気コメディアン。今は脚本を書いたり、監督やミュージシャンとしても活躍している。
英語の読める方は公式サイト→http://adamsandler.com
彼の日本語ファンサイトは→http://abcdane.net/AS/
本作関連ページは→http://abcdane.net/AS/mt/archives/000019.html
・ハワイのロケ地はオアフ島。キス・シーンは(H)ロイヤル・ハワイアン、朝のシーンは(H)カハラ・マンダリン・オリエンタルだそうです。