■マッリの種 Malli(米国公開タイトル『The terrorist』)
1998年/インド(タミル語)
監督:サントーシュ・シヴァン
出演:アイーシャー・ダルカール
配給:キングレコード、ギャガ・コミュニケーションズ、ゼリアス・エンタープライズ
上映時間:99分
公開:終了
■ストーリー
19歳の少女マッリは、闘士として自らの命を組織に捧げ生きているテロリスト。彼女に任された任務は、VIP暗殺のための人間爆弾となること。仲間に讃えられ待機の村に到着したマッリは、リハーサルを重ねて士気を高めるが、村の人々との生活で、次第に自分の中に鼓動を打つ「生命」を感じはじめる。迷いの心を拭い去れないまま、決行の日がやってきた…。
■クロス×レヴュー
インド映画のイメージといえば、きらびやかな宮殿や歌い踊る美女。そんな先入観でこの作品に出会うと、たぶん上映と同時にショックをうけるはず。そこに登場するのは泥臭い緊張感とひたすらに強い眼差しなのだから。組織のために死を望むマッリの目は、まるでそうすることを組み込まれている人形のように正確で冷たい。それが次第に人間の生きた瞳に変わっていく様子が緊張感たっぷりに描かれる。台詞や表情にインド映画独特の仰々しさはあるけれど、歌と踊りを抜きにした異色の魅せ方だ。これまでインド人の「華やかで美しいものへのあこがれ」を満たす役割を果たしてきたインド映画が、新しいエンターテイメントの領域に入った、ということかもしれない。
★★★(竹内詠味子)
主人公であるマッリから、カメラが大きく離れることはない。カメラはひたすら顔のクローズアップをとらえる。予算の関係もあるのだろうが、背景はあまり映らないし、派手なアクションシーンもない。戦闘シーンでも画面に映るのはマッリの周辺数メートルだけだ。ちょっと自主映画っぽい造りだが、それが逆に観客の関心がマッリだけにひきつけられる効果を生んでいる。またマッリはテロリストとして育てられた少女なので、外の世界をよく知らない。映画のできごとはマッリのいるところでのみ進行し、ゲリラがどんな組織なのか全体像もとくに説明されない。たぶんマッリ自体がそうだったのだろう。繰り返されるマッリの顔のアップと、常に聞こえ続けている息づかい。それが強い圧迫感をもたらし、息苦しいほど。
映画としては、正直言って自分の好みではないが、主役のアイーシャー・ダルカールの演技が全体を牽引するパワーにあふれ、強い印象を残したので、☆1つ追加。
★★☆(前原利行)
■映画の背景 Behind the Movie■
この物語は、1991年にラジブ・ガンジー首相が少女による自爆テロで暗殺された事件から構想が立てられた。ゲリラ組織「タミル・イーラム解放の虎」の人間爆弾は90年代に20人以上が実働した。作中にはマッリの他にも多くの女性闘士が登場するが、実際の組織でも1/3が女性戦力なのだそうだ。監督は本作品が監督デビューになるサントーシュ・シヴァン。インド・アカデミー賞を9回受賞した撮影監督で、『インディラ』『ボンベイ』などで知られている。撮影はオールロケで、チェンナイ(マドラス)を中心に行なわれた。
1998年のカイロ国際映画祭で審査委員長をつとめたジョン・マルコビッチが、このストーリーに感銘を受けてパトロンとなり、全米で話題を巻き起こした。