■ラブリー・リタ/Lovely Rita
2001年/ドイツ・オーストリア
監督・脚本:ジェシカ・ハウスナー
出演:バーバラ・オシカ、クリストフ・バウアー、ペーター・フィアラ
ヴォルフガング・コスタル、カリナ・ブランドルマイヤー
配給:ビターズ・エンド
上映時間:80分
公開:3月下旬、渋谷シネアミューズにてレイトショー
公式サイト→http://www.bitters.co.jp/rita/index.html
■ストーリー
郊外の一軒家に両親と3人で住む少女リタ。毎日学校に行き、時々ベビーシッターのアルバイトをする感じのごくフツーな女の子。一見何も問題のないような家庭ではあるが、家の地下で射撃練習をするのが趣味の父親は偏屈で口うるさく、ささいなことでリタを叱りつける。学校では英語劇の発表会を開くためにグループで練習するものの、リタの役はメイド役で、仲間からはのけものにされている。リタの心の中で何かが変わりつつある。そんな日々の中で、彼女はバスの運転手に恋をする。彼女の不安定な心の行き先はどこへ向かうのか……?

■レヴュー
僕のクラスにも、クラス中で一番背が高く、大きな胸と大きな図体を申し訳なさそうにしている、無口でスローペースの女の子がいた。口のまわりにうっすらとヒゲをたくわえ、だらしなく半ば口を開けて遠くの方を見ている女の子を、僕は不気味だと思った。彼女は、僕の知らない世界をのぞいているようにも見えた。
この映画をみて、そんな女の子のことを思い出した。主人公のリタは、おそらく中学生くらいかと思われる。トイレの蓋をきちんと閉めなかっただけで、父親に小言をいわれ、母親は親身にもなってくれず、学校では除け者扱い。その一方で、リタの内側では抑えきれない性への衝動が身体を支配しはじめる。彼女はバスの運転手を誘惑するファム・ファタルへと変貌する。(それは僕にとって可笑しく、やはり、無気味に写るのだが)
自分をうまくコントロールができなくなり、物事を思うように進めることもできず、そのフラストレーションをどこにもぶつけることができずに、鬱屈していく。この閉塞感や不安定感は誰もが中学生の頃に経験することだ。
時々カメラは唐突にズームアップをするのだが、それが緊張感と不安定感をうまくひきだしている。あまり思い出したくもない、当時のリアルな感覚までも呼び覚ましてくれるのだ。
リタのように、何かがぷつんとキレてしまう子供達は、けして少なくはないだろう。日本の中学生にとってこれは紙一重の物語で、特別な物語ではないはずだ。
★★★(カネコマサアキ )

■関連情報
日本語字幕監修はカヒミ・カリィが担当している。