| ■旅の途中で−Farda−/Farda |
製作年/製作国:2002年/日本・イラン初合作
|
監督:中山節夫('37年生まれ、ドキュメンタリーや児童映画作品が多い。『原野の子ら』('99))
監修:アッバス・キアロスタミ('40年生まれ、『友だちのうちはどこ?』('87)『桜桃の味』('97))
脚本:横田与志('43年生まれ、『化粧師』('01)、TBSドラマ『ホテル』など)
出演:宍戸開、オスマン・ムハマドパラスト、忍足亜希子、大杉漣、寺田農、松原智恵子
配給:日活株式会社
上映時間:106分
公開:終了
上映館リスト→http://www.farda.jp/theater.html
公式サイト:http://www.Farda.jp
|
|
| ■ストーリー |
|
仕事漬けの日本人サラリーマン宍戸開が、以前、会社の命令で切り捨てた町工場の社長・寺田農の娘でかつての恋人・忍足亜希子から、出稼ぎイラン人への未払い給与を託され、1人イランへと旅立つ。日本から帰国したイラン人親子(お父さんはF.インザーギ似)やトラック運転手の老人など、イランに生きる人々に出会い、旅を続けるうち自分を見つめ直していく。
|
|
| ■レヴュー |
日本人、やっぱり疲れているのかなあ。親切な人々との出合いによって心が癒されていくのは、ロードムービーの黄金パターン。ここにもまったく目新しい展開はない。しかし海外へ旅立たなければ癒されないほど、日本人は疲れているのか。今秋公開の日中合作映画『漢方の王様』も日本人たちが万里の長城で漢方治療を受けて癒されて行くという話だった。
イランへ行ったことのない人なら、ペルシア語が話せない主人公の前に次から次へと日本語を話すイラン人が登場し、わざわざ親切に世話を焼いてくれたりするのはご都合主義にみえるだろうけど、「旅行人」読者でアジアを横断したような読者なら、それはよくあることだとわかるはず。
|
|
 |
知り合った日本語使いのイラン人の家に泊めてもらったり、言葉が通じないトラック運転手の老人との旅も、いつのまにか心地よくなっていたりすることも、よくわかるだろう。また主人公が乗ったイラン航空便が夜遅くテヘランの空港に着き、不安を感じながらもタクシーに誘われてホテルへ向かったり、翌朝朝食のビュッフェで食い入るように「歩き方」を読んでいるシーンはリアル。旅の初日はこんな感じだ。
しかしこの映画には意外性がなく、まったくの予定調和で終わる。イラン人の心の豊かさ(=余裕)に触れることによって、今まで何かに追われるように生きてきた主人公・井沢が、何がもっとも大事なのかに気づき始める。ストレートすぎるというか、ヒネリがないというか。旅の感じはウソっぽくないんだけど、どうも直球勝負なところがノれなかった。
それと映画の中身と関係ないところで気になるのが、この映画、後援が外務省で協力に在イラン日本大使館や商社の丸紅や伊藤忠が名を列ねていること。文部省推薦だしね。あと都知事も推薦か。こうした肩書き多いと、何だか善意で作った映画かもしれないのに、ウラを感じてしまう。あとストーリーとあまり関係ないところでアップになる「日清カップヌードル」や、主人公がバイブルのように持ち続ける「歩き方」。「『アジア横断』を持ってくれ」とはいわないけど、何かタイアップでもあったのかなあ。イランの地図のアップは、「歩き方」のやつだし。
ちなみに監修を『友だちのうちはどこ?』などで知られる名匠アッバス・キアロスタミが手がけており、監督の中山節夫よりも先に名前がクレジットされている。頼まれたんだろうなあ、イラン政府から。
★★☆(前原利行)
日本語を話すイラン人は確かにいろいろな所でタイムリーに現れ助けてくれ、時にはお節介なまでに世話をやいてくれる。会ったばかりなのに家に招いてくれる人や道案内してくれる子供など、イランを旅したことがある人には、「あぁ、そうなんだよな〜」と思えるところがいくつもある。
ただ、この映画を観る人の多くは、そうしたところに「お約束」というか、作り手の都合を感じてしまうだろう。子供の前で急に歌い始めたり、言葉の通じないイランのじいさん相手に日本語で身の上話をひとしきり語られた日には、「そりゃないだろ」と誰もが思うに違いない。主人公の無神経は作り手の無神経でもあると思う。カップヌードルのお湯は何処から? 走行中の車内で絵を描ける? といった小さな疑問も重なると、折角の旅行気分にも水を指され、いちいち気になる。もうこうなったら、逆に間違い探しの要領で誰かと観れぱ楽しめるかも?
そんなこの映画の見所は映画の途中に時々現れるイランの子供達の表情だろう。中山監督の本領か、キアロスタミの影か? とにかくいい。
'02年日本で公開の『チャドルと生きる』や『アフガン・アルファベット』、『酔っぱらった馬の時間』といったイラン映画の問題作と比べると、かなり穏やかで、旅行者の体験するイランには近い。
★★☆(今野)
|
|
| ■映画の背景 Behind the Movie■ |
|
この映画の中で主人公はイランを旅して心癒されるわけだが、現地で旅行者の書き付けた情報ノートなどを読むと、近年では心掻き乱されてイランを後にする旅行者も少なからずいるようだ。まず第一に外国人(特に日本人)女性へのチカン行為。通りでのすれ違いざまやバスの中などで、カップルで旅していても、その男越しに触ってくる奴もいるというから驚く。イスラム教徒の間では我慢を強いられている反動が、異教徒の女性に向けられるというのが腹立たしい。さらに外国人(特に日本人)の男に対しても、複数でからかってきたり、帽子を取るなどのちょっかいを出してくる奴らなどが一部にはいるようだ。イスラム革命のほとぼり(?)もさめて緩み始めているのか、自由化の悪いほうの現れか、嘆かわしい。
『旅行人ノート アジア横断』の書き直しのため、昨年('01)、11年ぶりに僕(今野)はイランを訪れたが、残念ながらこのようなことになっていた。僕自身にとっては相変わらずの愛すべき国イランだが、同・取材者の下嶋さんは怒りを持って帰国したうちの1人。今ではシリアやヨルダンのほうが評判いい。
'90年にイランを旅し、行く先々で親切にもてなされ、当時イランの悪口を言う旅行者に会ったことはなかった。それ以来「これまで旅して来た中でどの国が一番良かった?」と聞かれるたびにイランを挙げてきた僕の立場はどうなるの? |
|
| ■関連情報■ |
|
| 主人公をトラックに乗せていってくれる老人オスマン・ムハマドパラストさんは、劇中でもドタールという民族楽器を奏でているが、実際にこのかたはその第一人者で挿入歌も彼の作品。また映画同様、小学校建設にも寄付しているという。 |
|
| ■DVD情報 |
|
バップ (2003-05-21)
売り上げランキング: 93893
|