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■1票のラブ・レター/Raya makhfi

製作年/製作国:2001年/イラン=イタリア

監督・脚本:ババク・パヤミ
原案:モフセン・マフバルバフ
出演:ナシム・アブディ、シラス・アビディ、キシュ島の住民たち

配給:ムヴィオラ、クレストインターナショナル
上映時間:100分

公式サイト→http://www.crest-inter.co.jp/secret_ballot/

2001年ヴェネチア国際映画祭監督賞他5部門受賞
 
■ストーリー
 
 ペルシャ湾の島、キシュ島に空から投票箱が降ってきた。今日は選挙の日。箱を受取った兵士のもとに、選挙管理委員の若い女性がやってくる。選挙に慣れていない島の人たちを探し、投票させること。それが彼女の仕事だ。若い兵士は女性の護衛をすることに不満だが、しぶしぶお供をする。字が書けないからと女性30人分をまとめて投票しようとする男、男に聞かないと投票できないとする女性たち。2人はさまざまな人々に出合い、1日が過ぎていく。
 
■レヴュー
 
 相反する若い2人の男女がジープに乗込み、人々に投票してもらおうと島をまわる。出合う人々との1つ1つのエピソードは、厳しいイランの現状を現わしているのだろうが、それを見つめるまなざしは「太陽政策」のように柔らかい。兵士が走る男を見つけ捕えるが、逆にこの男に「銃で脅して投票させるのか」と言われるシーンが最初の方にある。それは銃によるものだけでなく、管理委員に言われて仕方なく投票するということも含まれている。
 主人公の女性は選挙の大切さを説いて回るが、多くの人々は無関心でそんなものは必要ないと答える。「遅れた国だ」と単純に思えないのが今の世の中だ。選挙による民主主義というものが有効に働いているかと言えば、現在の日本を見ればそうも言えない。アメリカでも30%以下の人の意見しか政治に反映されていないという。一種、楽天的な民主主義感をもっていた選挙管理委員の女性が、そうした矛盾を知っていく過程がこの作品の中にある。
 

 そしてラスト、空から落ちてきた投票箱と同様に、突然この女性を迎えに大きなジェット機がやってくる。この登場がちょっとビックリ(現実なのだが今までの島の風景とまったく異なるので、ファンタジーのように見えてしまう)。女性が去り、島は以前と全く変わらないようだ。しかし1つだけ確実に変わったものがある。護衛の若い兵士の心に残していったものだ。それは彼女へのほのかな恋心であり、また「民主主義」と置き換えてもいい。見張りを替わろうというこの兵士が同僚に理由を聞かれ、「きっと眠れないから」というセリフがこの作品に余韻を残した。
 同じイラン映画でもマフマルバフ作品のような巧妙な語り口はないが、小さなひとつの話を神話のように語ることができるのも、イラン映画ならではだろう。
★★★(前原利行)
 
■関連情報
 
 監督はこれが長篇第2作目のババク・パヤミ。66年にテヘランに生まれたが、79年のイスラム革命後、一家はカナダに移住。98年にイランに帰国し、2000年にデビュー作『ワン・モア・デイ』を発表。この作品で東京国際映画祭の最優秀芸術貢献賞を受賞するなど、世界的に評価を受けた。
 
■映画の背景 Behind the Movie■
 
 劇中ではどの島であるか明確にされてはいないが、映画の撮影はすべてキシュ島で行なわれた。キシュ島は自由貿易地域にあるため、イラン人の買い物客を中心に発展している観光地。住民はペルシャ人以外にも、アゼリ系トルコ人、ギラキ人、マザンダラニ人、クルド人、アラブ人などさまざまな民族が暮らしている。イラン映画では『キシュ島の物語』や『私が女になった日』などの舞台として取り上げられている。
 映画ではわずか1日の出来事だが、ロケは冬の8週間に渡って行なわれた。出演者は主役の2人を含め、すべて素人だ。
 

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