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■ある子供/L'Enfant




2005年/ベルギー=フランス

監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ(『ロゼッタ』『息子のまなざし』)
出演:ジェレミー・レニエ(『イゴールの約束』『ジェヴォーダンの獣』)、デボラ・フランソワ、ジェレミー・スガール、ファブリツィオ・ロンジョーネ(『ロゼッタ』)、オリヴィエ・グルメ(『息子のまなざし』)
配給:ビターズ・エンド
上映時間:95分
公開:12月10日より、恵比寿ガーデンシネマにて

公式HP:www.bitters.co.jp/kodomo/

■ストーリー

 出産を終え、赤ん坊を連れて自室のアパートに戻ったソニア。ブリュノは父親の自覚もないまま、仲間と盗みを働きながらその日暮らしをしている。役所で意外と素直に子供を認知したブリュノに対し、ソニアはまじめに働いて欲しいと懇願する。職業訓練所に並ぶソニアを置いて、ブリュノは赤ん坊のジミーを連れて散歩する。そしてある事を思いつく。ブリュノは生活費のため、闇社会の人脈を使って、自分の赤ん坊を売ってしまうのだった。
 
■レヴュー
 
 この映画は、少年犯罪、ニート、子育てや教育……様々な時流の社会問題を深く内包する一方で、国や時代を超えた人間の普遍性がある。これ以上望む事が 出来ないほど高みに上り詰めた芸術性を兼ね備えながら、社会への批評性を強く持っている。始まりから終わりまでぴんと張りつめたただならぬ緊張感は、どんなスリラー映画にもかなわない。短期間で2つものパルムドールを獲得したダルデンヌ兄弟の厳格なスタイルは決してぶれることはない。
 ダルデンヌ映画にしては珍しく、カーチェイスがあったり、冒険譚がある。主人公が痛い目にあって過ちに気づくという童話のような教訓がある。子供達が見ても十分理解できるメッセージが含まれていると思う。

 自分たちには、必ず産んでくれた親がいて、彼らの子供であること。そして子供を産み、親となり、子孫を残して行くこと。多分、それは、人類にとって最も 普遍的で、尊い行為に違いない。人間は生まれながら、悪人ではなく、無垢な存在である……。あまりにキリスト教的な価値観によって支えられた、父親のような厳しくもやさしい眼差しが、ラストで感動的に結実する。(★★★★カネコマサアキ)


 ちょうどこの原稿を書いている中、TVでは連日フランスの暴動のニュースが伝えられている。駐車している車に火をつける若者。ニュースではそのほとんどが失業している「移民」の若者と伝えているが、なかにはそうではない、貧しくて行き場を失っただけの者もいるだろう。「パリは中心部ではなく、郊外が荒れているよ」と聞いたのは、もう十年も前のこと。ニュースに映し出される「郊外」の風景は、この映画でブリュノが住む町によく似ていた。
 主人公ブリュノは、精神年齢は子どものまま大きくなった青年だ。責任感も明日の希望もなく、毎日好き勝手に、目先のことだけ考えて生きている。日本でもよく話題になる大人になれない若者の問題は、実は欧米先進国では80年代から問題になっているという。それに日本でも最近は「一億総中流」の幻想が崩れ始めている。ヨーロッパ同様、「下流」の層が拡大しているというのだ(雑誌によれば、今では日本人の15%が貧困層らしい。トルコよりマシ、ギリシャより悪いといったところ)。「下流」といっても、それは貧困だけの問題ではなく、向上心に欠け、希望がない(そもそも希望を持つことを知らない)若者が増えているのだそうだ。
 精神的に大人になることがなく、そのまま30代に突入。そんな人は大人なのか、子供なのか。「子供の心を持った大人」といえば聞こえはいいが、そこにはネガティブな側面もある。タイトルの『ある子供』とは、ブリュノの子どものことでもあり、主人公であるブリュノ自身のことでもある。人はいつから「大人」になるのか。この映画を見た後は、誰しもそんなことを考えてしまうだろう。(★★★☆前原利行)
 
■関連情報
 
 本作でダルデンヌ兄弟は、2005年カンヌ国際映画祭のパルムドール大賞を受賞した。兄弟の作品では、1999年の『ロゼッタ』でパルムドール大賞と主演女優賞を、2002年の『息子のまなざし』で主演男優賞とエキュメニック賞を受賞したのに続き、カンヌで受賞した3作品目である。
 
■DVD情報
 
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