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■ミリキタニの猫/The Cats of Mirikitani

2006年/アメリカ

監督・撮影:リンダ・ハッテンドーフ
登場人物:ジミー・ツトム・ミリキタニ、ジャニス・ミリキタニ、ロジャー・シモムラ

配給:パンドラ
公開:9月8日より、ユーロスペースほかにて全国公開
上映時間:74分
公式HP:www.uplink.co.jp/thecatsofmirikitani

ニューヨークの反骨の路上画家ジミー・ミリキタニ。強制収容所で青年期を過ごすし、数奇な人生を送った彼の過去をさぐるドキュメンタリー


■ストーリー
ニューヨークのソーホーの路上で、絵を描いている日系人ホームレスの老人ミリキタニ。偶然彼に出会ったドキュメンタリー作家のリンダは、興味を持つ。9.11テロの日、混乱する市内で、いつも通りひっそりと路上で絵を書いているミリキタニの姿があった。リンダは彼を自宅に招き、今まで知らなかった彼の過去を少しずつ知っていく。アメリカで生まれ、広島で少年時代を過ごしたこと。やがてミリキタニはアメリカに戻るが、戦争中は強制収容所に入れられ、市民権も失くしたこと。離れ離れになったままの姉がいることなどなど…。彼に絵を描かせる強い衝動は、癒えない傷と怒り、そして平和への強い願いだった。
■レヴュー

ニューヨークの街角で出会ったホームレスの老人。その彼がアメリカの苦い過去を教えてくれる。

時期はおりしも9.11テロの時。戦争に向けて邁進し、アラブ系移民に対する迫害や偏見が増していく中で、かつてアメリカにも同じようなことがあったと、日系の老人ミリキタニの存在は私たちに気づかせてくれる。カリフォルニアで生まれ、少年時代を広島で過ごしたミリキタニ。戦争によって収容所に押し込められ、思い出の町・広島を原爆でなくす。戦争やそれから起きる差別の怖さをよく知っているが、彼はそれに負けることなく、アメリカで生き続けた。彼は好んで猫の絵を描くが、それは単に猫好きということ以外に、ある思い出があることがわかる。収容所で猫の絵をよく彼にせがんでいた少年がいたが、その少年はそこで病死したのだ。そう思うと、ミリキタニの描く猫は、偏見や迫害に囚われない、「自由」のシンボルのように見えてくる。

ミリキタニ自身の絵も、独特の個性があって面白い。(★★★前原利行)

■映画の背景
・映画の中でミリキタニが口にする「強制収容所」は、第二次世界大戦中にアメリカ国内に設置された日系人強制収容所のこと。アメリカでは戦争が始まると、国防上、敵正外国人を隔離する法律ができた。しかし実際はドイツ系、イタリア系などにはあまり適用されず、日系人や日本人移民に限られ、その収容者はその財産や権利を失った。終戦と共に日系人収容所は閉鎖されたが、剥奪された日系人移民の市民権が回復したのは1952年だった。1988年には、黄色人種に対する人種差別法だったとして、日系アメリカ人に対する損害賠償が行われている。

 アメリカへ移民したものならず、アメリカで生まれ育ち、アメリカ国籍しかもたないアメリカ国民に対して、このような隔離制度が行われたことは、人種偏見に基づくものであったが、それは今日でも消えていない。9.11テロの後、アラブ系米国人に加えられた暴力や偏見を見て、まさに当時の再現と思った日系人もいたことだろう。

■関連事項
・日系人収容所や第二次世界大戦中の日系人迫害を扱った映画には、『夜明けのスローボート』『ヒマラヤスギに降る雪』『アメリカンパスタイム俺たちの星条旗』などがある。併せて観ると参考になるだろう。

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