| 中国、青海省、チベット高原。「ココシリ」と呼ばれる海抜4700メートルの土地で、一人の山岳パトロール隊員が密猟者によって殺された。かつて100万頭もいたチベットカモシカだが、毛皮が珍重され乱獲されたことから、その数は1万頭まで激減していたのだ。
事件を調べに一人の青年記者ガイが北京からやってきた。ガイはパトロール隊のリーダーのリータイに同行取材を申し込む。チベット族出身の彼だが、都会で成長した彼は、子供たちに外国人に間違えられ、「ハロー」を声をかけられるほど、地元からは浮いた存在に見える。私たちは、この都会育ちのガイの目を通してココシリの大地を旅し、その過酷な自然や、密猟者たちと戦う隊員たちのハードな生活を見ることになる。
皮をはがされ、湖畔に捨てられた無数のチベットカモシカの死体。それを集めて、無言で火葬する隊員たち。捕らえた男たちは毛皮の処理をするために、密猟者から集められた貧しい農民たちだった。翌朝、逃亡した彼らを追う隊員たち。逃げる方も追う方も、鼻や口から血を流して倒れてしまう。高地で走ったために肺気腫になってしまったのだ。ここでは何事も死と隣り合わせだ。
せっかく捕らえた農民たちだが、彼らに分け与える食料も、また運ぶガソリンもない。仕方なくココシリの大地で彼らを解放するが、車もない彼らが歩いて村に帰りつく見込みは少ない。あとは運命を天にゆだねるしかないのだ。そして肺気腫になった隊員を救うために、押収した毛皮を売って治療費を捻出するしかないという現実…。
人を寄せけないココシリの風景とあいまり、甘さを排除したハードな演出は、見ていて最後まで緊張感を強いる。そして言葉少ない隊員たちだが、その表情や行動にリアリティがあり、かつて見たアメリカ西部劇の登場人物が持つ魅力を思い起こさせられた。 今年見た作品の中でも、忘れられない1本になるだろう。(★★★★前原利行)
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