Home > 旅シネ >4ヵ月、3週と2日

■4ヵ月、3週と2日/4 Luni,3 Saptamani si 2 Zile

チャウシェスク政権下のルーマニアで、困難に立ち向かう二人の女性
2007年カンヌ国際映画祭、パルムドール(最高賞)受賞作品

2007年/ルーマニア

監督:クリスティアン・ムンジウ
出演:アナマリア・マリンカ、ローラ・ヴァシリウ、ヴラド・イヴァノフ

配給:コムストック・グループ
公開:3月1日より銀座テアトルシネマ
上映時間:113分
公式HP:http://www.432film.jp/

 
■ストーリー
 
1987年、チャウシェスク政権下のルーマニア。冬の寒いある日、大学生のオティリアは寮のルームメイトのガビツァとせわしくなく動き回っていた。寮を出たオティリアは大学へ行き、恋人のアディに会う。「今日は母親の誕生日だから来てくれ」とアディは言うが、オティリアは気もそぞろだ。次にオティリアはホテルへ行くが、予約が入っていないことを知り、仕方なく別のホテルを取る。そこからガビツァに電話をすると、ガビツァが会う予定の男に代わりに会って欲しいと告げられる。実はガビツァは妊娠しており、オティリアはその違法中絶の手助けをしていたのだ。男はその中絶医だった。思うようにことは運ばず、オティリアは苛立っていく。
 
■レヴュー
 
チャウシェスク独裁政権末期のルーマニアでは中絶は非合法で、それを犯したものには重い罪が待っていた。工業化に必要な労働力を増やすため、女性には最低三人の子を産むようにと出産が奨励されていたからだ。避妊も事実上禁止で、コンドームの販売もされなくなった。しかし経済が破綻した状況下では、いくら子を増やせといっても密かに中絶をするものが後を絶たなかったという多かったという。

映画のタイトルとなっている『4ヵ月、3週と2日』とは、カビツァが中絶する日までの妊娠期間のことだ。学生である彼女の妊娠は学業の休止を意味するし、また経済的にも大きな負担だ。ただし作品が描くのは「中絶の是非」ではなく、ある状況に追い込まれた女性二人がその時にどう行動するかだ。映画にはカビツァを妊娠させた男は出てこないし、またオティリアの彼氏も誠実だが頼りにはできない存在として描かれているので、二人の女の「共犯」関係を中心に話が進む。していることは「違法」なので嫌でも信頼関係が結ばれるというシチュエーションは、犯罪映画に似ていなくもない。

しかしこの二人、性格も行動も対照的だ。オティリアは弱さを隠し、気丈に生きる女だが、妊娠した当事者のカビツァは自分に都合のいいようにウソを重ね、結果的に友人にも迷惑をかけていく、自分に甘い「困ったちゃん」なのだ。

カメラは、二人にとっての辛くて長い一日を、ほぼワンシーン・ワンショットで追っている。テンポを良くするためのカットがない分、ひとつのシーンは長くなるが、その間の俳優の表情や行動から、セリフに表れない微妙な感情を見ることができるのだ。行ったことがない80年代のブカレスト市民の生活の再現は興味深かったし、またやたら説教するモグリの中絶医のキャラも面白かった。甘く考えているガビツァに厳しい言葉を吐くが、確かに「中絶は甘くない」って言いたくなるよねえ。(★★★☆前原利行)

 
■映画の背景
 
・八十年代のルーマニアは、工業化政策で輸入した原料の支払いによる対外債務により必要な食料まで輸出に回し、国民はひどい耐乏生活を強いられていた。食糧事情が悪い中、さらに出産が奨励されたため、孤児や捨て子が大量に発生したという。
 
■関連情報
 
・本作は2007年のカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールに輝いた。続くグランプリ(審査員特別大賞)には、日本の河瀬直美監督による『もがりの森』が受賞。この年は他にも『パラノイド・パーク(ガス・ヴァン・サント監督)』、『潜水服は蝶の夢を見る』『ペルセポリス』などが各賞を受賞している。

Home > 旅シネ >4ヵ月、3週と2日