■2046
2004年 / 香港
監督・脚本:ウォン・カーウァイ(『花様年華』『ブエノスアイレス』『恋する惑星』)
撮影: クリストファー・ドイル(『花様年華』『HERO』)
出演: トニー・レオン(『花様年華』『インファナル・アフェア』)、木村拓哉、フェイ・ウォン(『恋する惑星』)、チャン・ツィイー(『LOVERS』『初恋のきた道』)、コン・リー(『さらば、我が愛/覇王別姫』『紅いコーリャン』)、カリーナ・ラウ(『欲望の翼』『インファナル・アフェア 無間序曲』)、マギー・チャン(『花様年華』『宋家の三姉妹』)、チャン・チェン(『グリーン・ディスティニー』)、ドン・ジェ(『至福のとき』)
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル
上映時間:130分
公開:日劇3ほか全国にて公開中
公式ホームページ:http://www.2046.jp
■ストーリー
1967年の香港。シンガポールで恋に破れた、元新聞記者のチャウ(トニー・レオン)が戻ってきた。そこで昔なじみのダンサー、ルル/ミミ(カリーナ・ラウ)と出会うが、彼女は彼のことを知らないという。彼女を送っていった部屋、その部屋の番号「2046」にはチャウの思い出があった。ルルはまもなくその部屋を引き払い、チャウは隣の2047号室に住むことになる。しばらくすると隣には水商売の女バイ(チャン・ツィイー)が引っ越してきて、やがてチャウと親密な関係になっていく。しかしチャウはかつて恋した人妻スー(マギー・チャン)や、同じ名の女性賭博師スー(コン・リー)との過去を忘れることができない。チャウの住むホテルに住む支配人一家の長女(フェイ・ウォン)は日本人駐在員(木村拓哉)と恋仲だが、親と反対されて男は日本に帰ってしまう。チャウはいつしか「2047」という未来を舞台にした小説を書き始める。未来社会には、そこへ行けばすべてが変わることなく存在しているという「2046」という場所がある。だがそこへ行って帰ってきたものはいない。ただ1人をのぞいて。その男(木村拓哉)は永遠に続くと思われる列車に乗り、再び「2046」を目指している。そして彼はアンドロイド(フェイ・ウォン)に恋をする…。
■レヴュー
さておき、これはまぎれもなく「いつものカーウァイ映画」で、決して宣伝にあるような「エンターテインメント作品」ではない。カーウァイ作品でも、とくに『欲望の翼』『花様年華』と同じ世界観のものだ(続編といってもいい)。『欲望の翼』のラスト、それまでまったく登場していなかったトニー・レオンが部屋で身支度するシーンで終わっているが、この『2046』はあそこにくっつけても話が通じそうだ。冒頭、シンガポールで失恋をして傷ついたレオンが香港に戻ってきて、昔なじみのダンサー、カリーナ・ラウに会う。その時、かつてこの女性にフィリピンの華僑の息子の恋人がいたが死んでしまったこと。「足のない鳥」の話が出てくることからも『欲望の翼』とキャラは一緒なのだろう。
当初、この作品は2046年を舞台に、管理社会と戦う4人のエージェントを描いたSF作品と聞いていた。また、そんな予定だったに違いない。97年の香港返還の際に、中国は「今後50年間は今の体制を変えない」と約束。「2046」はその協定が切れる年な
のだ。
この作品は1999年から撮影が開始されたが、途中で中断し、先に『花様年華』(00)が完成してしまった。そして今回できあがった作品は、当初のものとはまったく別の作品になってしまった。舞台は1967年前後の数年の香港。未来のシーンは主人公が書く小説の中のみで、全体からすればその割合は短い。「2046」とは「何も変わることのない場所」で、それは「香港」という社会を描くというより、もっと誰もが持つプライベートな過去の追憶の場所になっていた。
登場人物の多くは過去のカーウァイ映画と同じように、過去やしがらみといったものに縛られ、前に踏み出すことができない。未来よりも過去を選んでしまうタイプだ。その群像劇は『欲望の翼』に似ているが、登場人物たちが大人になった分、もっと内に秘めた情念が強くなっているような気がする。とにかく俳優の顔のアップが多い。ストーリーや状況をわかりやすく解説しようという気はおそらく監督にはないので、とにかく映画をひっぱるのは俳優の演技だ。さすが中華圏のトップ俳優を集めただけあって、観ているだけでいい気分になってくる(その中ではキムタクは違和感あり。演技レベルが違い過ぎる)。豪華な女優陣の中で、とくに出番も多いチャン・ツィイーがすばらしい。コン・リーも出ていたが、時代はもう彼女の時代と痛感した。
傑作ではないし、長過ぎる。でも、きっとまたあのキャラクターたちに会いたくなって、僕はまたこの映画を観てしまうだろう。あの『欲望の翼』のように。前夜、『アイ、ロボット』というふぬけた大作を観た後には、とくにそう感じた(キム・タクは『アイ、ロボット』に出ていれば違和感なしと妄想が働いた)。この「2046」、もしDVDでカットしたシーンが復活されれば、いうことはない。(★★★前原利行)
■DVD情報
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