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■旅シネ 執筆者が選ぶ2009年ベスト10
 

前原利行(旅行・映画ライター)
 
 今年、スクリーンやDVDで観た映画の本数は全部で183本、前年が272本だったので、あまり映画を観なかった年だった。たぶんここ10年で200本を切った年は初めてだ。うち新作は96本、前年が102本だったので、家での観賞が減ったのだろう。2008年は旅シネに48本書いたレビューも、2009年には24本と半減。
大作の名作は今年も少なく、選んだのも小粒な作品が多い。昨年に続き10本選ぶのに困った。邦画はあまり見ていないので、自然と本数が少なくなった。佳作はそれなりにあるが、傑作が少なかった年か。

 戦場でワルツを(アリ・フォルマン監督/イスラエル、ドイツ、フランス、アメリカ)
 「断トツで1位!」という訳ではないのだが、観た時のインパクトからこれを今年の1位に推す。また時代背景などわからない点も、この後勉強させてもらった。OMDの「エノラゲイの悲劇」がかかる船上のシーンが、自分に猛烈にフラッシュバック感あり。ディスコであの曲が流れていた頃、地球の別な場所では殺し合いが行われていたことをリアルに感じた。

 グラン・トリノ(クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
 昨年、日本で公開されたイーストウッド作品は2本。『チェンジリング』も遜色ない出来映えなのだが、後味のよさを取ってこちらを上に。白人優位の「良きアメリカ」の終焉を静かに受け止め、次なる世代や人種に受け渡していくという大きなテーマを、描く力量はさすが。ただし、自分自身の演技プランは古臭いままで、ショックを受けて「手からコップを落とす」という前時代的な演技を堂々とするのには笑ってしまった。

 アバンチュールはパリで(ホン・サンス監督/韓国)
 ホン・サンス監督の『気まぐれな唇』は僕のフェイバリッドの1本だが、新作である本作もオシャレな邦題とは裏腹に、女性に翻弄され続ける主人公のダメさ加減が観ていて共感を呼んだ。オシャレ映画と思って観に行って失望した人の書き込みがネット上に多数あったが、そんな人に「ざまあ見ろ!」と言いたいほどの快作だ。

 それでも恋するバルセロナ(ウディ・アレン監督/アメリカ、スペイン)
 『マッチポイント』以来絶好調のウディ・アレン。またも性悪女を演じさせたら最高のスカーレット・ヨハンソンを好配役。女たらしのスペイン人芸術家役のハビエル・バルデムもいいし、ペネロペ・クルスの怪演もインパクト大。スペイン観光気分にもさせてくれる楽しいコメディだが、人間観察はかなり辛らつ。

 ウォッチメン(ザック・スナイダー監督/アメリカ)
 オープニングのディランの「時代は変わる」から一気に引き込まれた。パラレルワールドにヒーローたちがいたらという設定で、アメリカがニクソン政権下で超大国になった世界が描かれている。ラストを含め、今までのヒーローものにはなかった大人の世界。

 フィッシュストーリー(中村義洋監督/日本)
 中村義洋監督とは相性がいいのか、同じく伊坂幸太郎原作の『アヒルと鴨のコインロッカー』もいい出来だったが、語り口から言えばこちらのほうが進化していると思う。巨大彗星があと数時間で地球に激突するというフィッシュ・ストーリー(ほら話)と、成功しなかった70年代パンクバンドの話がリンクしていく。後味も良く安心して人に勧められる。

 チェンジリング(クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
 完成度は高いのだが、主人公が精神的に痛めつけられるという展開とハッピーエンドとは言えないラストに、ランク的には下がってしまった。イギリスの雑誌で『ミリオンダラー・ベイビー』が、「見たあと必ず落ち込む映画ランキング」で1位になったというイーストウッド。それだけ、彼の演出力は高いのだ。これと韓国映画の『シークレット・サンシャイン』を続けて観たら、子持ちの親はかなりへこむよ。

 あんにょん由美香(松江哲明監督/日本)
 林由美香という人を知らず、また彼女の映画を観たこともなかったのだが、このドキュメンタリーを観ていると、彼女が本当に多くの人に愛されていたことがわかる。若くして亡くなったピンク映画女優。彼女が出演した韓国製ポルノの謎を探るというドキュメントだが、作り手の人の好さもあり、映画を作る人たちの「映画愛」に満ちた作品になった。ラストもじわっと感動。いい気分になった。

 きつねと私の12か月(リック・ジャケ監督/フランス)
 詳しくは旅シネのレビューを。子供向け動物映画かと思って油断して観ていたら、最後にノックアウトをくらった感じ。野生動物を飼い馴らせると思う人間のおごりを冷たく突き放す。最後にキツネがまた現れるシーンは、「あれじゃ子どもに辛すぎて見せられない」という大人の事情か。

10 倫敦から来た男(タル・ベーラ監督/ハンガリー、ドイツ、フランス)
 それまでコツコツと普通にやってきた男が、ふとしたことで道を踏み外していく。冒頭の30分に及ぶワンシーンワンカットは、久々の映画時間を堪能。その反動で途中ウトウトもしたが、中盤からまたテンションが上がって、けっこう満足。

 ベストテンにはもれたけど、その日の気分で交換可能なのは、以下の作品。
『アバター』、『インフォーマント!』、『アニエスの浜辺』、『カティンの森』、『アンヴィル』、『母なる証明』、『俺たちステップ・ブラザース-義兄弟-』。

 

カネコマサアキ(マンガ家、イラストレーター)
 
 玄海灘は知っている(キム・ギヨン監督/韓国)
 1961年の作品だが、復元された形では本邦初公開。太平洋戦争末期、名古屋で訓練を受ける朝鮮人学徒兵と日本人女性の恋愛を軸に描く青春戦争映画。全編朝鮮語なので、日本兵による虐待のシーンは逆に朝鮮の軍隊に入ったような錯覚に。名古屋空襲の事実が漏れないように情報統制が敷かれていたという事実も盛り込んであり、日本映画が描いてこなかったもうひとつの視点・歴史がここにある。死体の山から主人公が蘇るシーンは圧巻だ。東京国際映画祭にて。

 春風沈酔の夜(ロウ・イエ監督/中国)
 南京を舞台に、ゲイのカップル(一方は既婚者)の周辺を描く。肉体関係で繋がっている一固まりの群衆の「関係性」が、ある事がきっかけで次第に個性を発揮してバラバラになって行く様子を淡々と描く。カメラの揺れが書画の筆使いのようだ。東京フィルメックスにて。

 タレンタイム(ヤスミン・アフマド監督/マレーシア)
 急逝した女性監督の集大成ともいえる渾身の一作。タレンタイムという学芸会に出場するマレー系、中華系、ユーロ=アジアン(混血)系、そして舞台にすら上がれないインド系の高校生たちの家庭背景を描きながらマレーシア国家を表象する。東京国際映画祭にて。

 チェンジリング(クリント・イーストウッド監督/アメリカ)
 「グラン・トリノ」を批判したいけど、長くなりそうなのでやめておこう。

 母なる証明(ポン・ジュノ監督/韓国)
 映画的文法をすべて習得してしまったかのような巧みさだ。今回も韓国人の「顔」を活写。

 ペルシャ猫を誰も知らない(バフマン・ゴバディ監督/イラン)
 非合法のインディーバンドがロンドンでライブを開くために、パスポートやヴィザを取得しようと奔走するが、悲劇の顛末に。6月の暴動の背景を示唆するような内容。テヘランのアンダーグラウンドミュージックの紹介もあり、とても興味深い。しかし、この映画を撮った事でゴバディ監督はイランにいられなくなってしまった。東京フィルメックスにて。

 アバンチュールはパリで(ホン・サンス監督/韓国)
 パリでぶらぶらしたくなる。

 時の彼方へ(エリア・スレイマン監督/イスラエル・パレスチナ)
 キリスト教系パレスチナ人のスレイマン監督の自伝的映画。家族の歴史とイスラエル・パレスチナ現代史をアイロニーとブラックユーモアを交えて描く。東京国際映画祭にて。

 ジャライノール(ジャオ・イエ監督/中国)
 『馬烏甲』の監督の2作目。内モンゴルのジャライノールの炭坑で蒸気機関車の運転士をしている初老の男と若い同僚。初老の男が退職していくのを、ひたすらに追いかけ見送る若者。前作とは違って陰影のある力強い風景と人々の表情が素晴しい。中国インディペンデント映画祭にて。『グッド・キャット』『小蛾の行方』も無視できない作品だ。

10 九月に降る風(トム・リン監督/台湾)
 清々しくもリアルな青春群像劇。台湾映画=青春映画の方程式を堅持。

次点、入れ替え可能作品
*心の魔(ホー・ユーハン監督/マレーシア)
*ミルク(ガス・ヴァン・サント監督/アメリカ)
リミッツ・オブ・コントロール(ジム・ジャームッシュ監督/アメリカ)
*ヴィザージュ(ツァイ・ミンリャン監督/台湾=フランス)
*愛のむきだし(園温子監督/日本)
フィルメックスで観た「息もできない」も素晴らしかったが、来年公開が決まっているので除外。

2009年も旧作鑑賞とアジア映画に明け暮れた一年だった。
念願叶って見る事ができた「無垢の詩人G.アラヴィンダン」、ちと重かった「北朝鮮映画週間」、久しぶりにスクリーンで観た「成瀬巳喜男の世界」、エリック・クーを中心に新鋭たちの隆盛がめざましい「シンガポール映画祭」、一日のみ参加した「アジア・クイア映画祭」、「ジャン=ピエール・メルヴィル特集」、「ヴィタリー・カネフスキー監督特集」、毎年恒例となりそうな「中国インディペンデント映画祭」など、特集企画も充実していた。今年は「絶対コレだ!」という映画はなかったけど、良質な映画が団栗の背比べ状態で並んでいて、いつもながら選ぶのに苦慮した。

 

今野雅夫(フォトグラファー、ライター)
 
《日本映画》

 ディア・ドクター
 「蛇イチゴ」「ゆれる」の西川美和監督の新作ということで、マスコミ試写会場は連日満席。またその期待を裏切らない完成度に感服する。村に一人いた医者(鶴瓶、あっぱれ、ハマリすぎ!)の失踪をめぐり、持続する緊張感と、そこに時々折り込まれる笑いと共に、人間の聖と俗、その深淵が描かれる。アカデミー賞のひとつやふたつ取っても何も驚きではない。

 ニセ札
 笑いとシリアスの絶妙なコンビネーション、メッセージの込め方の巧みさなど目を見張る。初監督のキム兄はもとより、脚本の向井康介さん(「リンダリンダリンダ」など、一連の山下敦弘作品)の貢献度が高いに違いない。

 旅立ち
 松山千春のデビュー前後のドラマ。懐かしく、かの人の魅力を再確認する。主役がイマイチかと思っていたが、見ているうちに段々許せるようになってくる。

 愛と青春の宝塚
 大東亜戦争前後の「宝塚」が舞台の青春もの。新宿コマ劇場の最終公演を録画したダブルキャストの作品で、出演者で唯一見たことのある紫吹淳の回に日程が合わず、仕方なくもう一方のほうを観たのですが、湖月わたるさんたちにすっかり魅了される。また、そうならずにいられない脚本は大石静、音楽は三木たかし。映画館の最前列で仰ぎ見れば、宝塚の様式美を体感できる。

 南極料理人
 実際の南極観測隊員(調理担当)のエッセイ「面白南極料理人」をドラマ化。南極観測ものとして以上に、極地での人間観察ものとしてとても面白い。本作のダメ隊員役・古館寛治の怪演が光った『このすばらしきせかい』の沖田修一監督作。堺雅人や生瀬勝久、きたろうらの好演に加え、観てるとむしょうに腹が減ってくる料理の数々も見どころ。

 遭難フリーター
 フリーターでCanonの派遣社員でもあった監督のセルフ・ドキュメンタリー。東京に憧れ、それでも本気になれず、デモに興奮しつつも「何もわらない」と苛立ち、報道への違和感を感じながらも、すべてを社会や政治のせいにすることなく自分を見つめてもがく姿に好感がもてる。それは確かに「一番リアルな青春映画」に違いない。カメラを向けた同僚や辛口の友達、居酒屋の酔っぱらいやNHKのディレクターさん、実家の家族まで、みんないい味出している。そのまま経団連会長にも会いに行って欲しかったくらいだ。これから、ドキュメンタリー製作のADを始めるという監督のこれからも楽しみにしています。同名の書籍も相当面白い。

 犬と猫と人間と
 捨てられた犬と猫を取り巻く現状を追ったドキュメンタリー。人間の身勝手さに辟易し、重苦しくなりがちなテーマなだけに、それを解きほぐす工夫も散りばめられているのが有り難い。

 女の子ものがたり
 西原理恵子の自叙伝的漫画を実写映画化した、女の子の友情もの。魅力的な登場人物たちは原作(原画)より、みんなだいぶ可愛くなっているが支障はない。

 僕らのワンダフルデイズ
 オジさんたちが昔のバンドを再結成してコンテストに挑むという、イタクなりかねない話だが、竹中直人らが見事に消化し、楽しく観られる。ドラマー役に稲垣潤一というのが効いていて、出演はないが奥田民生が音楽アドバイザーというのも安心材料。

10 ヤッターマン
 深田恭子のドロンジョ様や生瀬勝久のボヤッキーを始め、キャストのハマリ具合が物凄い。それらを成立させたスタッフの感性とパワーは脱帽もの。懐かしいお約束の数々に脱力して笑いながら童心に返る。

《お勧め自主映画》

最低
 自主映画の賞を複数取る監督・脚本の今泉力哉さんは、独特な登場人物とそのやり取りで、魅力的なダメ人間たちを描かせたら日本でも有数ではないだろうか。新作が楽しみでなりません。

にくのひと
 兵庫県加古川の食肉センターで「牛」が「肉」になるまでの過程と、 そこで働く人々を描いたドキュメンタリー。時に差別意識を持たれながらも屠場で働く人たちが話す言葉にはいちいち頷ける。深刻になりすぎず、時にユーモラスなのは、大阪芸大の学生(監督は満若勇咲さん)たちによる製作(2007年)ということにも関係しているのだろう。

《外国映画》

 アンヴィル!夢を諦めきれない男たち
 今では全く売れていないカナダのヘビメタバンドを追ったドキュメンタリー。内容はサブタイトルから予想されるとおりの展開にも関わらず、出来過ぎなくらいにアップダウンが明快で、笑いと涙と共に応援せずにはいられなくなるのは愛すべきキャラクターのなせる技か。マイケル・ムーアや、ヘビメタ嫌いのダスティン・ホフマンらの絶賛も頷ける。

 扉をたたく人
 9.11後のNYが舞台の異文化交流映画の秀作。ジャンベ(アフリカン・ドラム)のリズムが、老教授とアラブ青年の2人を繋ぐというのがまたいい。

 縞模様パジャマの少年
 ホロコーストを題材にした寓話。今の日本でも大人は、子供に素直に訊かれたら答えづらいことばかりしていることにも気付かされる。

 そして、私たちは愛に帰る
 ドイツとトルコを舞台に、トルコ人とドイツ人の3組の親子が、さすらい織りなすドラマ。ストーリーはやや入り組んでいるが、トルコ系移民二世のファティ・アキン監督が「愛と許し」を描き出す。

 いのちの戦場-アルジェリア1959-
 オリバー・ストーン級の戦争映画。フランスからの独立を阻むための戦争(1954-62)にやってきた中尉を演じるイケメン俳優ブワノ・マジメル(立案・主演)の心意気もかいたい。アルジェリア系といえば、フランスをワールド・カップ優勝に導いたサッカー選手ジダンのことが頭に浮かぶ。彼の活躍を上の世代はどう見ていたのかなどと思った。

 風の馬
 1998年にチベットのラサやネパールで、監視の目をかいくぐり撮影された実話ベースの劇映画だが、今も変わらぬチベットの現実がよく分かる。チベットを解放したのだといって侵略占領している中国政府の横暴を見ると、北京オリンピックで盛り上がり、日々中国製品のお世話になっていることが恥ずかしくも思えてくる。

 新宿インシデント
 冴えない密入国者から成り上がるジャッキー・チェンが、シリアスな新境地を見せる力作。新宿で繰り広げられるヤクザ同士の抗争に、マフィアや警察、政治家が絡む展開はフィクションながら、綿密なリサーチによっている。

 それでも恋するバルセロナ
 今を時めくスカーレット・ヨハンソンとハビエル・バルデムらの恋模様を、一夏のバカンス気分で眺めているだけでも面白いが、一番傑作で魅力的で笑わせてくれるのが途中から絡んでくるペネロペ・クルス。

 幸せはシャンソニア劇場から
 1930年代の不穏な時代を背景に、ナスターシャ・キンスキー似の若きヒロインが歌うシャンソンが本当に心にしみる。芸達者な役者陣と共に、当時のパリのたたずまいもいい感じ。『コーラス』のスタッフ・キャストが再結集して作ったもの。ベタな劇場再建ものといって片付けてはいけない。

10 彼女の名はサビーヌ
 自閉症の妹を、フランス人女優サンドリーヌ・ボネールが数年間に渡って撮ったドキュメンタリー。「自閉症への正しい理解と医療制度の不備を知らせたい」と監督は言う。だが、それよりも、5年の入院生活の後、表情を失い30kg太ったこの妹のために、もっと自分は何かできなかったのだろうかという、やるせない思いが伝わってくる。

11 バーダー・マインホフ 理想の果てに
 70年代にヨーロッパを震撼させたドイツ赤軍の実録映画。日本赤軍以上の暴走ぶりとその結末には虚無感に襲われる。彼らの行き過ぎが、他国での戦争が選挙に全く影響しないような国ができるのに貢献したのだろう。

《必見ドキュメンタリー》

未来の食卓
 『不都合な真実』の食べ物版にあたるような内容で、農薬などによる食物汚染が告発され、解決に向けての提案や試みが描かれている。監督自らがかかった癌の原因追及が製作のきっかけというだけあって、様々な病気や異常と環境や添加物との関係なども詳しく語られている。食料生産現場の現状を告発した『いのちの食べかた』がほとんどアート系だったのに比べ、こちらはグッと分かりやすい。舞台は農業国・南フランスの村だが、状況は自給率40%の日本にも充分当てはまる。原題を直訳すると『子供たちは私たちを告発するでしょう』。このパンフレットがまた力作!

南京ー引き裂かれた記憶
 『南京大虐殺』についての、七人の被害者と六人の元日本兵の証言集。これを『虐殺』と呼ぶか、『戦闘に伴う巻き添え』と呼ぶかで議論するのは、あまりに虚しい。日本人としては、これらの証言すべてがでっち上げであって欲しいと強く思うのだが…。

沈黙を破る
 20数年に渡り、パレスチナ・イスラエル問題を伝え続けてきたジャーナリスト・土井敏邦さんの集大成。『南京ー引き裂かれた記憶』や『冬の兵士・良心の告発』と同様、占領軍の元兵士たちの証言により、占領地の軍人がとる行動の普遍を思い知る。「現象ではなく構造を描きたかった」と言うように、同名の著書にはさらに詳しく書かれている。

《お勧め映画祭》

東京平和映画祭
 反戦平和への道を模索し、それを阻むものを告発するコアなドキュメンタリーが世界中から集められ、トークを交えて上映される。その内容の濃さと充実ぶりに、全作を通しで観ると目眩がする。毎年7月('09年は6月)、近年は3日に渡って開かれているが、この映画祭や、不定期に行なわれる上映会やイベントの情報は⇒http://www.peacefilm.net/

 

加賀美まき(造形エデュケーター)

《韓国映画》

2009年に劇場公開された韓国映画は20本弱で、クライムサスペンス系の力作が目立った。ドキュメンタリーに秀作があった一方、韓流らしい涕涙のラブストーリーやコメディー作品が少なく残念だった。

 チェイサー(ナ・ホンジン監督)
 連続殺人事件を巡るたった1日の追跡劇を緊張感途切れることなく見せる、2009年一押しの韓国映画。シリアルキラーになりきったハ・ジョンウと彼を追う元刑事役キム・ユンソクが鬼気迫る熱演。

 映画は映画だ(チャン・フン監督)
 鬼才キム・ギドクの原案・製作。ヤクザのような俳優と俳優になりたかったヤクザが、映画で共演するという設定がユニーク。反目しながらも真剣に向き合いぶつかっていく男をソ・ジソブとカン・ジファンが演じる。人気俳優のW主演が話題に。

 母なる証明(ポン・ジュノ監督)
 息子の無罪を信じて奔走する母親役にTVドラマで活躍する大女優キム・ヘジャ。子どもに注ぐ母親の「無償の愛」は、美しいが時に盲目的で恐ろしいと知る。人間の本性をえぐり出す傑作。

 牛の鈴音(イ・チュンニョル監督)
 30年間、苦楽を共にした老農夫と老いた役牛の日常を、牛の最期の時まで追った秀作ドキュメンタリー。機械を使わず農薬も撒かず、黙々と働き続ける老人。そのひたむきな姿と老牛との強い絆に心を打たれる。

 食客(チョン・ユンス監督)
 最高の料理人の座を巡る料理対決に手に汗握る。韓国料理の奥深さと食材への飽くなきこだわりを知る作品。天才料理人ソン・チャンを演じたキム・ガンウがさわやか。日韓の「過去」に触れる部分はノーカットで上映された。

 アバンチュールはパリで(ホン・サンス監督)
 ごく日常の語り口で男女の本音を描き出すのはホン・サンス監督の真骨頂。だらしなくパリをぶらつく男とワケアリな女たち・・いつのまにか登場人物が愛らしく思え、自分の別な姿を映し出していると気づき、苦笑する人も少なくないはず。

 セブンデイズ(ウォン・シニョン監督)
 「シュリ」「LOST」のキム・ユンジン主演。娘を拉致され、殺人犯の無罪釈放を要求された辣腕女弁護、7日間の奮闘を描く。謎解きと時間に追われる緊迫感のある演出が絶妙。

 ノーボーイズ・ノークライ(キム・ヨンナム監督/韓国、日本)
 妻夫木聡とハ・ジョンウが、心に様々な思いを抱え、先の見えない現実にもがく二人の青年を絶妙なバランスで演じる。意外にも心に残る佳作となった。

 グッド、バッド、ウィアード(キム・ジウン監督)
 豪華キャスト競演、1930年代の旧満州が舞台の韓国産西部劇。日・朝・漢・満・蒙の「五族」が、満州に宝を追い求めていた時代の空虚さがシニカルな作品。

10 アンティーク 西洋骨董洋菓子店(ミン・ギュドン監督)
 原作はよしながふみの大ヒットコミック。癖のある4人の男性店員と怪しげな客が織りなす、キッチュでいてお洒落な物語。芸術品のようなスウィーツも楽しめる。

番外編:2009年には、劇場未公開の秀作が多くDVD化された。
「ラジオスター」「My Son あふれる想い」「正しく生きよう」「ビューティフル・サンデー」「優雅な世界」「大誘拐 クォン・スンプン女史拉致事件」

 
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