■旅シネ 執筆者が選ぶ2005年ベスト10
前原利行(旅行・映画ライター)
1 スターウォーズ EP3 シスの復讐(アメリカ/ジョージ・ルーカス)
今年のベストテンは、単純に何度も見てしまう映画、DVDを購入してしまう映画を上位にした。昨年2位にした『ミスティック・リバー』なんかDVD買ったけど、1回しか見なかったもんなあ。その点、シリーズ最終作となる本作は、いくら不満があっても10回は少なくとも見るんだろう。劇場で2回、DVDで1回もう見てるし。しかし空想の世界の「スターウォーズ」でさえ、見ている間、現在のブッシュ政権下のアメリカを感じてしまうなんて、なんて酷い世の中なんだろう。今は。
2 亀も空を飛ぶ(イラク、イラン/バフマン・ゴバティ)
かと思うと、イラクのクルディスタンにおける苛酷な現実を描いたこの映画が、神話的色彩を帯びてくる。空想も現実の反映でしかなく、現実も非現実な世界の前には"空想"のように見える。単純な反戦映画でもなく、プロパガンダでもない、映画的興奮を見事に閉じ込めたすばらしい作品。もう1回見たいと思わせる、映像の力がここにある。
3 ハックル(ハンガリー/パールフィ・ジョルジ)
これまた奇妙な映像を、奇妙な視点で見せてくれた映画。宇宙人の視点で、ハンガリーの農村のすべてを見つめたような作品。人がのほほんと何もない一日を送っている間、自然界では大変なことが起こっているという映画です。
4 ディア・ウェンディ(デンマーク/トマス・ヴィンターベア)
見終わった後、徐々に効いてくる映画。忙しさにかまけてレビューが書けなかったのがとても残念。「いじめられっ子たちが銃を持つことで自分に自身を持つが、それがやがで悲劇に…」という青春映画だが、「それ今のアメリカじゃん!」て思うところが、今の世の中は何て…とまた言いたくなる。アメリカの銃問題を取り上げた意欲作『ダウン・イン・ザ・バレー』とともに根が深いが、ヨーロッパ人が描くと寓話になる。ゾンビーズの懐メロがしばらく耳について離れられない。
5 宇宙戦争(アメリカ/スティーブン・スピルバーグ)
巷ではボロボロの評価のこの映画だが、嫌いじゃない。DVD買ったし。9.11以降のアメリカ人の恐怖感を見事に映画化した作品。しかしスピルバーグも今のアメリカに危機感抱いていることは、その前の『ターミナル』見てもよくわかる。と勝手にこちらが妄想しているだけなのか。怪獣映画としても楽しめる。ブォーン。
6 キング・コング(アメリカ/ピーター・ジャクソン)
これもまったく不満ないわけじゃないけど、結局DVDも買って何度も見てしまうんだろう。丁寧に造られた怪獣映画で、ゴジラもジャクソンがリメイクしていれば、あんなことにならなかったかも。恐竜との戦いや、巨大昆虫襲撃、そして涙のクライマックスと、見たいもの全部見せてくれて、ありがとうごさいましたって感じ。大晦日に劇場に行った甲斐があった。
7 ノー・ディレクション・ホーム(アメリカ/マーティン・スコセッシ)
ボブはいつだって最盛期だが、その最盛期中の最盛期、デビューから66年のオートバイ事故までの変遷を追った3時間半のドキュメンタリー。昨日撮ってきたきたばかりのような、ボブ・ファンの僕でも見たことないクリアな映像にビックリ。そしてけっこうボブが「ふつうの人」(人から借りたレコード返さないとか)なのにも驚く。これもDVD出たら即買い。しかし年末の忙しい時だってのに、ユーロスペースに3時間半の映画見にくる奴はどんな顔してるんだろうと見回すと、ムサい男ばっか。女にゃボブはやっぱりわからないのかなあ。。
8 ベルリン僕らの革命(ドイツ、オーストリア/ハンス・ワインガルトナー)
見終わってしばらくしてから、ジーンと効いてくる映画。歳とってしまってロックしなくなった男にも効く映画。レビューに書きそびれたけど、ティム・バックリィの曲がいい。
9 世界(中国/ジャ・ジャンクー)
ジャ・ジャンクー作品は今までちょっと苦手だったんだけど、これは成熟したというか、「お見事!」という出来。現在の中国社会の寓話だとか、いろいろあるけど映像としてもすばらしい。。
10 ある朝スウプは(日本/高橋泉)
2004年のぴあフィルムフェスティバルやバンクーバー映画祭など、各国の映画祭でグランプリを受賞した作品。自主製作なんだけど、大手が作った空虚なメジャー大作が悲しくなるほどすばらしい出来。アパートに住む男女の間の緊張感が、まるで目の前で繰り広げられているようで、ほかの日本の俳優の演技が演技臭く見えるほどリアル。機会があったらぜったい見るべき。
(次点)「7人のマッハ!!!!!!!」、「ロード・オブ・ドッグタウン」、「ビフォア・サンセット」
カネコマサアキ(マンガ家、イラストレーター)
1 ランド・オブ・プレンティ(ドイツ=アメリカ/ヴィム・ヴェンダース)
ヴェンダースによる“アメリカの友人”への手紙。得意のロード・ムービーというスタイルで、久しぶりに「ヴェンダース映画」に再会した感じがある。9.11以降のアメリカを声高に批判するのではなく、内側から癒そうとする物語に驚きと感動を覚える。
2 浮気雲(台湾/ツァイ・ミンリャン)
開いた口が塞がらないほどの怪作。日本のAV、ピンク映画にオマージュを捧げている。孤独と渇きと疼き。洪水の季節を描いたコメディ『hole』と対をなすような作品。
3 亀も空を飛ぶ(イラン/バフマン・ゴバディ)
今までのイラン映画の枠組みから大きく飛び出したかのような印象を受ける。登場人物の巧みなキャラクターづけ、文学的な寓意性、社会批評性。どれも完璧。
4 リンダ リンダ リンダ(日本/山下敦弘)
高校時代という「原風景」をそのままよみがえらせてしまう力量に脱帽。ペ・ドゥナもますます良い。
5 受取人不明/コースト・ガード(韓国/キム・ギドク)
ベルリンで銀熊賞を穫った『サマリア』を挙げるより、映画祭のみの上映でビデオ・スルー同然の扱いを受けたこちらの2作品を挙げておこう。
6 ある子供(ベルギー=フランス/ジャン=ピエール&リュック・タルデンヌ)
前作『息子のまなざし』ほどの完璧さと驚きはないけれど、やはりこの緊張感はスゴイ。ラストもいい。
7 愛についてのキンゼイ・レポート(アメリカ/ビル・コンドン)
社会意識は時代とともに変わることを痛感。研究者およびセクシュアル・マイノリティを勇気づける作品。
8 輝ける青春(イタリア/マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ)
近年、60〜70年代の学生運動、左翼主義運動を回顧する作品が多いが、中でも傑出した作品だと思う。運動の挫折から現在を繋ぐ時間の中で、もう一度「人間性」を取り戻そうと思索する作業。混迷極まる現代への応援歌。
9 コーヒー&シガレッツ(アメリカ/ジム・ジャームッシュ)
モノクロームの美しい映像と小粋な会話。この映画を見て、やめていたタバコを再開。ジャームッシュの才能と自分の意志の弱さを再確認。コーヒーとタバコって何でこんなに合うんだろう?!
10 誤発弾(韓国/ユ・ヒョンモク)
韓国映画屈指の名作といわれる作品をようやく見ることができた。61年に製作されたとは思えないほど斬新な表現に満ちている。朝鮮戦争停戦後の貧困に喘ぐ一家の姿を克明に描く。
◆選からもれたが、放っておけない作品たち
11. アワー・ミュージック(フランス/ジャン=リュック・ゴダール)
老齢な監督が撮ったものとは思えないほどラフで若々しい映画。遺言状じゃないかと思ってしまう内容。
12.世界(中国/ジャ・ジャンクー)
東武ワールドスクエアー、北京版。ジャンクーのこだわったローカルな土地をを離れ、北京へ。人工的で閉鎖的な「世界」を舞台にしたアイデアはとても面白い。
13. ボーン・スプレマシー(アメリカ/ポール・グリーングラス)
前作に引き続き、クールなアクション映画に酔った。新鋭イギリス人監督の美学が光る。
14. ミッドナイト・マイ・ラブ(タイ/コンデイ・ジャトゥララスミー)
タイ映画の底力がここにある。ラジオからノスタルジックなオールディーズが流れる中、孤独なタクシー運転手とソープランド嬢のプラトニックな愛を綴った秀作。繊細で行き届いた演出に舌をまく。
今野雅夫(フォトグラファー、ライター)
1 リンダ リンダ リンダ(日本/山下敦弘)
素晴らしい。特別なにが起こるというわけでもないのに面白い。学園祭、ケンカ、思い付き、告白……、あのなんともいえない高校時代がよみがえる。配役が絶妙で「吠える犬は噛まない」のペ・ドゥナが特に効いている。日韓友好万歳と小さく叫びたい。
2 マザー・テレサ
偉業の実際がどんなものだったのかがよくわかる。身内から地元からの非難・反発を乗り越えて行く姿が頼もしい。この映画に出てくる誰かに自分の姿を見てしまうだろう。いかにもな描写で気になる所もあるが、そこは流さないと……。
3 故郷の香り
昔の彼女が田舎で苦労しているのを見かけたら……。中国映画の名作の一つ。
4 風の前奏曲
ラナートというタイの古典楽器(木琴)のイケメン奏者が主人公のタイの国民的大ヒット映画。
5 オペラ座の怪人
舞台に劣る部分もあるが、それを補って余りある映画ならではの描写が冒頭からある。
6 ネバーランド
「ピーターパン」誕生秘話。創作の意味と価値を教えてくれる。
7 Shall We Dance ?
泣ける設定やシーンのいくつかがなくなっていたりして、原作の完成度の高さを思い出す。ジェニファー・ロペスはラテン専門にしか見えないが、それでもかなり楽しめる。
8 きみに読む物語
古き良き(?)アメリカのオーソドックスなラブストーリー。保守派が喜びそう。
9 皇帝ペンギン
歌やナレーションさえうるさく感じられるほど美しい南極の風景と、そこに暮す皇帝ペンギンの毛並み。本国では「ディープ・ブルー」をも上回るヒットを記録したそうだ。
10 ダンシング・ハバナ
出演者が魅力的!サルサ満載で、キューバ気分が味わえる。
●2006年の超オススメ
ホテル・ルワンダ
虐殺シーンがウリにされることなく、人間ドラマとしての見応えが存分にある実話の映画化。アフリカ版「シンドラーのリスト」。
●ドキュメンタリーの意欲作
映画 日本国憲法
『チョムスキー9.11』と同じ監督と製作者により、その続編という位置付け。チョムスキーを始め、12人の学者や歴史家などへのインタビュー集のダイジェスト。戦争放棄を誓った前文や第9条がアメリカから押し付けられたものというより、守り続けてきたものだということが分かる。
Little Birds イラク 戦火の家族たち
「ユー・アンド・ブッシュ、お前たちは一緒にイラクを破壊してるんだ!」「いますぐ病院に行って、お前たちが殺した子供たちをちゃんと見て来い」とイラクの人たちが怒っている。「イラク戦争」に協力した日本人には必見かも。
ヤカオランの春
アフガニスタンの現代史が、難民教師の告白を通して明らかにされる。
●番外編(DVDやビデオを買って観るしかないかも)
Identity
快作セルフ・ドキュメンタリー『あんにょんキムチ』の松江哲明監督作。ドキュメンタリーで食べていくのは厳しいから、アダルト業界へ行ったのかと思っていたら、スタイルはそのままに、新境地を開拓していた。相変わらず可笑しいし、考えさせられたりもする。「韓朝中、在日AVドキュメント」だって。
脱皮ワイフ
愛すべきダメ〜な雰囲気が全編に漂う倒錯官能ロマン。
旅シネ執筆者が選ぶ2004年ベスト10
旅シネ執筆者が選ぶ2003年ベスト10