■旅シネ 執筆者が選ぶ2003年ベスト10
■前原利行(旅行・映画ライター)
(1)「ロード・オブ・ザ・リング二つの塔」/原作も読んだしDVDも買った。あとは最終作の公開を待つばかり。
(2)「シティ・オブ・ゴッド」/ブラジル発、陽気と暴力が混在とした2時間半。圧倒されっぱなし。
(3)「藍色夏恋」/さわやかな青春気分にさせてくれた。
(4)「HERO」/その色彩と衣装に。画面のすみずみまで堪能した。
(5)「戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界」(ドキュメンタリー)/ストイックでプロフェッショナルなカメラマンの姿に、同じく人に伝える仕事をしている僕はカッコ良さを感じた。
(6)「ボウリング・フォー・コロンバイン」(ドキュメンタリー)/こういうドキュメンタリーが出てくるところにアメリカの救いを感じる。アカデミー賞授賞式でのスピーチに喝采。
(7)「土徳 −焼跡地に生かされて−」(ドキュメンタリー)/「自分史」を探るうちに原爆にたどり着くドキュメンタリー。限定公開のため見た人は少ないと思うが、ぜひ見て欲しい。
(8)「猟奇的な彼女」/韓国映画はどれもレベルは高かったが、これだけ楽しませてくれたのはこの作品。
(9)「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」/唯一のアメリカ映画らしいアメリカ映画。
(10)「死ぬまでにしたい10のこと」/「死」に向き合う主人公の姿勢がしみた。
いくらアメリカ映画が好きな僕でも、アメリカ映画の衰退が目についた1年だった。またドキュメンタリー映画の面白さに気づいた1年でもあった。「大人の鑑賞に耐える作品」を探すと、アメリカ映画は厳しい。いつからそうなってしまったのか。その代わり、強烈なインパクトを残すアジアや第三世界の作品が増えてきた。今年も楽しみだ。
今年やっと出合えた名作7本
新作ではないが、ビデオなどで見た旧作でインパクトがあったもの。
(1)「行商人」/イランのマフマルバフ監督初期作品。ホラー一歩手前の寓話とリアリズム。キョーレツ。
(2)「ザ・バニシング-消失ー」/南仏で妻が失踪。あの結末に『セブン』以来の救いのなさを感じた。
(3)「失われた時を求めて(影なき狙撃者)」/洗脳の恐怖。フランケンハイマー監督を見直したこの1年。
(4)「ピーウィーの大冒険」/もしかしてティム・バートンの最高傑作? デビュー作ならではのアイデアのおもちゃ箱。
(5)「フェリックスとローラ」/謎めいた女の正体にビックリしたが、それに妙にリアリティを感じた。ルコント作品をもっと見たくなった。
(6)「マルホランド・ドライブ」/わからない快感。自分だけで納得して幕を引いてしまうD・リンチ。
(7)「テシス 次に私が殺される」/アメナバール監督は『オープン・ユア・アイズ』『アザーズ』共にオチがある。『シックス・センス』シャマランと共に、次なるオチが気になってしまう。
■カネコマサアキ(マンガ家、イラストレーター)
(1)「息子のまなざし」/映像、映画の持つ力を再認識した。創作とは何か、を教えてくれる。
(2)「散歩する惑星」/腹をかかえて笑いっぱなしだった。なのに映像表現も独特。こんな映画みたことない。
(3)「ブリスフリー・ユアーズ+アピチャートポン・ウィラーセタクン短編集」/タイ王国の誇る孤高の映像作家。どの作品もそのアイデアと映像表現に圧倒されっぱなし。『ブリスフリ〜』はミャンマ−人不法労働者の不安 と憩いのひとときを 大胆な性描写を織り混ぜながら表現している。
(4)「さらば、龍門客桟」/ツアイ監督の映画への熱いオマージュ。古い名画座が骨董品のように美しく浮かびあがる。
(5)「藍色夏恋」/近年まれにみる青春映画の傑作。
(6)「シティ・オブ・ゴッド」/すぐれた伝記映画にしてギャング映画。特にディスコのシーンが圧巻。『黒いオルフェ』を思い出した。
(7)「きらめきの季節 美麗時光」/映画テクニックにただならぬものを感じた。そして切ない青春映画。こういうのに弱い。
(8)「戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界」/ドキュメンタリー映画の善し悪しは対象物の魅力によって左右されると思う。彼の写真と信念にシビれた。
(9)「吠える犬は噛まない」/韓国映画界の底なし沼のような才能。その一部。
(10)「青の稲妻」/キャスティングの妙やその空気感は以前と変わらないが、全編に色気が出て来た。第五世代の監督たちが迷走する中、中国勢の中では着実な前進を遂げているような気がする。
(11)「地獄のホテル」/60年代タイ映画の巨匠ラット・ペスタニー監督の妙技。観て得した気分。
(12)「ボーリング・フォー・コロンバイン」/アメリカ版『ゆきゆきて神軍』か。監督にはさらにもっと暴れてもらいたい。
(13)「キル・ビルvol.1」/ 待ちに待った『お祭り』という感じ。久しぶりに血が騒いだ。
(14)「hesheit」(アニメーション)/バンコクッ子に人気のマンガ「hesheit」のアニメバージョン。ノートの隅の落書きが世界を動かす。キュートな中にもトゲがある。
(15)「パンチドランク・ラブ」 /ノイズや音響系の音楽のような不思議な映画。『不快指数』全開。!
●期待したけどガッカリだった映画ベスト10(ワーストでありません。期待度と実際の落差順)
(1)「英雄(HERO)」/テーマやコンセプト、美術は一級なのに、非常に退屈な映画だった。戦いの背景にあるものが希薄ではないか?(★★☆)
(2)「The eye」/前作『レイン』に期待させるものがあったが、パン兄弟は実はこういうのが好きなのか。『運命からの逃走』は悪くなかったげど、趣味が合わないなあ。(★)
(3)「追憶の殺人」/いい作品だが、やはり、最後は白黒はっきりさせるべきではなかったか。(★★★☆)
(4)「アイアンプッシーの大冒険」/ウィラーセタクン監督作目当てに観たが、実は共同監督のマイケル・シャオワナーサイ氏の一人舞台という感じ。笑えるクイアーフィルムだが、途中飽きてくる。(★★☆)
(5)「テープ」/予告編は面白そうだったのに……。(★☆)
(6)「ブラウン・バニー」/雰囲気はいいけど、今、これをやられてもなあ。(★★)
(7)「春の惑い」/品格のある優れた作品だが、もう少し役者の魅力と、新しい要素がほしい。(★★★)
(8)「ハリウッド・ホンコン」/予告編からはフルーツ・チャンの代表作になるか?と期待度高まったが、意外といつものペース。(★★☆)
(9)「ブルー・クラッシュ」/ヒッピー文化が花開いた場所が舞台なので、精神性の高い映画を期待していたが、ふたを開けてみるとなぜかスポ根。サーフィン・シーンは素晴らしいが無理矢理くっ付けたようなストーリーが残念。(★★☆)
(10)「グアバの季節」/ベトナム映画の傑作『ニャム』を撮ったダン・ニャット・ミン監督の新作。けして悪い作品ではないが期待しすぎたのがいけなかったのかもしれない。(★★☆)
■ 今野雅夫(フォトグラファー、ライター)
(1)「戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界」/自分がとても情けなく思えてくる。
(2)「ボウリング・フォー・コロンバイン」/まさにアメリカに残る数少ない良心。
(3)「猟奇的な彼女」/「彼女」が可愛くて可笑しくて愛おしくなる。
(4)「母と娘」/ベタな母娘モノで泣け!
(5)「息子のまなざし」/被害者は加害者を許せるかという人類の大テーマを尋常でない緊張感で見せる。
(6)「スパイ・ゾルゲ」/戦前から戦時中の様子を知る助けになり勉強になる。
(7)「小さな中国のお針子」/世界を変える本(言葉、物語)の力を美しい中国の田舎を舞台に思う。
(8)「アバウト・シュミット」/ジャック・ニコルソンが冴えない中年男を怪演。
(9)「ブルークラッシュ」/大画面で観たい昨夏の一本。とって付けたようなお話でもいいじゃないか。
(10)「少女の髪どめ」/観た直後はそれほどでなくても、今思い返すといい映画。
●次点
「ゲロッパ」/笑えてホロリ。キル・ビルと並べてごめんなさい。
「キル・ビルvol.1」/カッコよくて可笑しくて、かなりバカ。ネライでも勘違いでも構わない。マンガだと思えば楽しめる。
「HERO」/チャン・イーモウの映像美と、ワダエミさんの仕事も光る。
ジャック・タチ「ぼくの伯父さんの休暇/往年のフランス・コメディ。これだけ新作じゃなかったですね。
「トゥー・ウィークス・ノーティス」/サンドラ・ブロック主演、ロマンティク・コメディの王道。
「刑事まつりシリーズ」/当たりハズレの激しいオムニバス。大森南朋監督の『リハビリ刑事』、井口 昇 監督の『アトピー刑事』など、面白いのだけ集めてまた観たい。
「ベッカムに恋して」/イギリスに暮すインド人少女がヒロインのスポ根モノ。
「永遠のマリアカラス」/何かを喪失したオバサマ世代の星なのでは?映画でオペラが堪能できる。
「アマロ神父の罪」/聖と俗の狭間を揺れる青年神父のヒール振りが見物。
「ムーンライト・マイル」/地味で良質なハリウッド映画。