旅行人ノート
チベット 第3版
定価:本体価格1800円+税
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カン・リンポチェ(カイラス山)巡礼
(カン・リンポチェ周辺地図596X685pix)
カン・リンポチェ 崗仁波斉峰 ガンレンボーチーフォン(非)
カン・リンポチェ、通称カイラスはヒンドゥー教徒、ジャイナ教徒、ボン教徒、そして仏教徒の最高の聖地である。カン・ティセという古名でも呼ばれる。中国語では最近、略して「神山」と呼ぶことが多いようだ。
最も古くからカイラスに目をつけていたのはヒンドゥー教徒だろう。特にシヴァ派では、カイラスをシヴァ神の住まう所と位置づけ、山頂の形をシヴァの象徴リンガ(男根)とみなして崇拝の対象としている。
カン・リンポチェ周辺のシャンシュン王国で栄えたとされるボン教では、開祖のシェンラプ・ミウォが天から降り立った地とされている。また、チベット仏教徒にとってはカン・リンポチェ(尊い雪山)は、仏教の宇宙観がそのまま地上に現れたマンダラ。カン・リンポチェはブッダ(あるいは大日如来)であり、周囲の山々は菩薩や神々である。
仏教とほぼ同時期に誕生したジャイナ教では、開祖が悟りを得た場所とされている。
なぜこれほどの聖地になったのか? 理屈はともかく、その神々しい姿を目にすれば、文句なく納得できるはずだ。
もともとボン教徒の修行場だったようだが、チベット仏教の巡礼地とされるようになったのは、そう古いことではないらしい。11世紀にミラレパが修行のために訪れ、その弟子たちにあたるカギュ派の修行者らが修行センターとしていた。
チベットが鎖国政策をとっていた時代はもちろん、中国に併合された後も、中印の国境紛争や文革期間の巡礼禁止によって、カン・リンポチェは常に外界から隔絶され、いやおうなしに神秘性を帯びる運命にあった。1980年代半ば、ようやくチベット人の巡礼が許されるようになり、やがて外国人も入域できるようになった。
なお、カン・リンポチェの頂上まで登った人はいない(ことになっている)。はじめてこの地に到達した日本人は河口慧海である。
『チベット』第3版 巻頭口絵とp.136-139の文章と地図にて構成