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各駅停車で行こう
蔵前仁一
定価:本体価格1400円+税
(税込価格1470円)
解説
旅行人の本
季刊『旅行人』
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購入方法


機内食の食器

 海外へ飛ぶ飛行機に乗るとたいてい機内食が出る。海外旅行を始めたばかりの頃は、この機内食があやしいまでに豪華に見えたものだ。
 こちらとしては(それなりに)高い運賃を払っていることもあり、それを取り戻そうと、出されたものは全部たいらげていた。さすがに歳を重ねるごとに食べられる量は減ってきたが、今でも各航空会社独特の機内食メニューを楽しみにしていることに変わりはない。
 さて、読者も御存知の通り、機内食は飲物やデザートまでつく本格的なメニューになっている。エアラインによっては菜食主義者用のメニューまで準備しているところもあるほどだ。もちろん食器には金属のスプーン、フォーク、ナイフが使用され、コップも紙製ではなくプラスチック製、いいところはガラス製だ。こういった食器類には、航空会社の名前やマークが入っており、いい記念になると思ってか、持ち帰ってしまう乗客もいる。
 あれは台湾から香港へ向かう飛行機の中だったと思うが、少し離れた席で香港の若い男がスチュワーデスから盛んに文句をいわれているのが見えた。スチュワーデスは男に、何かを出せといっているようだった。
 男は自分のバッグの中からヘッドフォンを取り出した。それは機内で音楽を聴くために配られたもののようである。もちろんそれは返却しなければならない。
 それが返却された後も、スチュワーデスはまだ男に向かって文句をいっている。男は何か抗弁していたが、結局彼女の剣幕に押されて、コップを取り出した。出てきたものは機内食用の食器であった。
 スチュワーデスはそれでようやく納得して、持ち場へと帰っていったが、男は僕を含めた多くの乗客の注目を浴び、恥ずかしそうにシートに身を沈めるのであった。こういうことってばれると本当に恥ずかしいだろうな。それにしても、彼は激しく抗弁していたようだったが、いったいどのような抗弁が可能だったのだろうか。言葉がわからないのが残念であった。
 ある時、インドへ向かう飛行機に乗った。お待ちかねの機内食が出て、僕はナイフとフォークを袋から取り出して食べ始めた。そこで、何か変だなと感じた。ナイフとフォークのデザインが揃っていないのだ。特に凝ったデザインのものではなかったが、太さが異なるせいか、握った感じが左右で違うのだ。
 それで、ナイフとフォークをよく見比べてみたら、実に意外な発見があったのである。なんと、そのナイフとフォークに刻まれていた航空会社の名前が、いま乗っている飛行機と違う会社のものだったのだ。さらに詳細に調べてみると、合計四社の備品が僕のテーブルに並んでいることが判明した。エア・インディア、パキスタン航空、タイ航空、エジプト航空の名前がいろいろな食器の中に発見されたのだ。おお、いずれもお馴染みの航空会社だ。このとき僕が乗っていたのはこの四社のうちのどれかの飛行機である。ま、いつもお世話になっていることだし、ここは伏せておいてやろう。
 それにしても、いったいこの食器はどこから持ち込まれてきたものなのだろう。まさか備品の業務提携をしているというのではあるまい? もしかして旅行者からとりあげたモノをそのまま使っているのではないか? な〜んてことがあるわけないし、僕には今もこれが謎なのである。○○○○航空の方々、真相を教えて下され〜。